ベンジャミン・バトン
−数奇な人生−
これは、８０歳で生まれ、若返っていく、と言う数奇な人生を生きた男の物語です。
この奇妙な物語は、Ｆ・スコット・フィッツジェラルドの短編小説が原作。これを、デヴィッド・フィンチャー監督は３時間近い、壮大なスケールの映画に仕上げました。
１９１８年。第一次大戦終結に沸く、ニューオーリンズのある夫婦に、まるで８０歳の老人のような姿をした男の子が生まれる。恐ろしくなった父親は、老人養護施設に赤ん坊を置き去りにしてしまう。
その施設で働くクイニーも、初めはその姿に驚くが、彼をベンジャミンと名付け育てることにする。
「老衰で間もなく死ぬ」と医師に宣告されたベンジャミンだが、歳を取り、成長して行く中で、彼はどんどん若返っていく・・・
歳を経るごとに若返って行く、その難役に挑んだのはブラッド・ピット。
ベンジャミンの晩年に当たるローティーン以下の年代の殆ど全てをひとりで演じています。
ブラッド・ピットは確かに、そのままでも４０過ぎには見えない俳優ですが、特殊メイクにＳＦＸを組み合わせ、見事にそれをこなしています。
また、同様にベンジャミンの“運命の女”、デイジーの２３歳から死ぬまでをひとりで演じたケイト・ブランシェットも見事なもの。カメレオン女優の面目躍如、と言う所でしょうか。
映画の中で、ベンジャミンは波乱に満ちた人生を送ります。
彼は、人生を共に過ごす家族を持てず、放浪の中、人々との出会いと別れを繰り返して行きます。
それは、彼の、人とは違う人生が導いた運命なのか、と言うと、それは違います。
人は誰でも、生まれて、そして死んで行く、と言う運命からは逃れられません。
人生は、出会いと別れの連鎖。ベンジャミンだけが、特別な人生を生きた訳ではありません。
ベンジャミンの、特異な症例は、我々に大事な事を教えてくれるのです。
人生にとって、大事な事は、その出会いで生まれた人との絆をいかに大切にするか、と言うこと。
ベンジャミンは、その生い立ちから、その絆が永くに続くものではない、と知っています。
だからこそ、彼は濃密な人生を生きたのです。
母に愛され、多くの出会いを持ち、最期は生涯をかけて愛した女性の腕の中で息を引き取る・・・ベンジャミンの人生が波乱に満ちながらも幸せなものであったのは、彼が人生に真剣に向き合ったから。
そして、それは我々の人生も同じなのだ、と言う事を教えてくれます。
映画の最初と、最後を飾る、逆回りする時計のエピソードは正に映画のテーマを象徴するもの。
時計の針を逆に回しても、人生を取り戻す事は出来ません。
生まれ、育ち、老いて行く人生は、誰しもが一度きりなのですから・・・
（２月１４日 １０９シネマズＭＭにて）
（作品データ）
■監督
デヴィッド・フィンチャー
■出演
ベンジャミン・バトン ・・・ ブラッド・ピット
デイジー ・・・ ケイト・ブランシェット
（その他のキャスト）
タラジ・P・ヘンソン ジュリア・オーモンド ジェイソン・フレミング イライアス・コーティアス
ティルダ・スウィントン ジャレッド・ハリス エル・ファニング マハーシャラルハズバズ・アリ
■コピー
人生は素晴らしい。
■Ｌｉｎｋ
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