旭山動物園物語
〜ペンギンが空をとぶ〜
北海道旭川市の旭山動物園。
動物園に勤める事になった吉田は、動物好きな青年。そんな彼が唯一苦手とする動物が“人間”だった。
そんな彼だが、滝沢園長やベテラン飼育係たちに迎え入れられ、飼育係として成長していく。しかし、客足が遠のくばかりの園の財政は赤字続き。それでも、滝沢園長以下、動物園のスタッフらは様々なアイデアを出し合い、動物園に活気を取り戻そうと奔走するが・・・
日本一の入場者数を誇る旭山動物園。
でも、１０年ほど前まで、旭山動物園は、廃園寸前の動物園だったのです。そこから、わずか数年で日本一の動物園になった奇跡の物語の、これはその序章とでも言うべき映画。
その意味では、ちょっと肩透かしされた気分になるかも知れません。
映画に描かれるのは、老朽化著しく、しかも旧泰然とした動物園（勿論、現在の旭山ではなく、日本各地の動物園がその“代役”を務めています）、そこでの物語が中心になるのですから。
もっとも、広く知られている実話の映画化だけに、ウソっぽさが鼻に付く作品になる可能性もあった訳で、監督は、この映画を、よく知られている部分より以前の部分に焦点を合わせ、かつ、貧乏動物園における飼育係たちの苦闘と言う、ある意味、普遍的とも言える人間ドラマにして来ました。
これはなかなか面白い取り上げ方で、それ故、この映画は、まるでスポ根ものの青春ドラマのような味わいを持っています。
ただ、気になったのは、この映画、キャストが豪華に過ぎる。
実話としても有名で、モデルすら特定出来そうな映画の割に、それを演じるのが、いずれも個性のはっきりとした老練の名優ばかり。
準主役の滝沢園長が西田敏行と言うのはいいとしても、飼育係が柄本明に岸部一徳、塩見三省、そして長門裕之です。
こうした名優と言うのは、キーとなるポジションに据えるからこそ映画が引き締まる訳で、こうもキラ星のごとく並べられては、有り難みも薄れようと言うもの。
この物語、そもそもエピソードに力がある訳で、しかも、題材が映画界で「子供と動物には勝てない」とさえ言われる動物モノな訳です。
むしろ、俳優としては色のついてない人の方がよかったんじゃないか、と思います。
（その意味では、吉田を演じた中村靖日はよかったです）
欲を言えば、いじめられっ子で人間嫌いの吉田の成長と、動物園の成功を重ね合わせる部分が上手く行けば言う事なしだったのですが、なにはともあれ、この「奇跡の物語」を映画にした事は見事。
最後の現在の旭山動物園の状況は、どんなスポ根もの映画でも描けない、「奇跡の大逆転勝利」そのもの。
これが実話でなければ、誰も信じられないであろう光景には思わず感動してしまいました。
（２月７日 ＴＯＨＯシネマズ川崎にて）
（作品データ）
■監督
マキノ雅彦
■出演
吉田強 ・・・ 中村靖日
小川真琴 ・・・ 前田愛
滝沢寛治 ・・・ 西田敏行
（その他のキャスト）
笹野高史 平泉成 梶原善 吹越満 堀内敬子 麿赤兒
春田純一 木下ほうか でんでん 石田太郎 とよた真帆
天海祐希 長門裕之 萬田久子 六平直政 塩見三省
岸部一徳 柄本明
■コピー
“世界初” 動物園に響く野生のシンフォニー
■Ｌｉｎｋ
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