蛇にピアス
１９歳、痛みだけがリアルなら
痛みすら、私の一部になればいい。
これは、金原ひとみの芥川賞受賞作を、“世界の蜷川”こと劇作家の蜷川幸雄が映画化したもの。
「スプリット・タンって知ってる？」
渋谷のクラブでルイに声をかけた青年アマ。髪を赤く染め、顔中にピアスをした彼が口を開くと、舌の先はヘビのようにふたつに割れていた。何故だかその舌に強く惹かれたルイは、アマに紹介された彫り師のシバの店で、舌にピアスをする・・・
なるほど、これは、見事なものだと思います。
ルイたちの行動は、理解を超えた異質なものにしか感じられるかもしれません。
でも、自らに苦痛を与え、死を口にする彼らもまた、「生きる」事に対する、リアルな実感を求めているのでしょう。
それは、ぬるま湯のような現実を生きる現代人にとってのアンチテーゼなのかも知れません。
執筆当時２０歳の金原ひとみが覗き込んだ深遠の片鱗・・・芥川賞受賞にも納得です。
また、この映像美は確かに一見の価値あり。
さすが、“世界の蜷川”。
あと、特筆すべきは吉高由理子でしょう。撮影当時１９歳でこれを演じるのですから、確かに度胸があります。
まぁ、この映画のオーディションの際に、蜷川監督の前で、
「胸ちっちゃいんですけど」
と、いきなり脱いだと言うクソ度胸。
映画でも、思い切りのいい脱ぎっぷりを見せています。
現代的なシャープな美貌の持ち主で、その独特の透明感を評する人もいます。でも、彼女の透明感は澄み切っているにしても、その底に何があるか判らない、暗黒の虚無感が潜んでいるように思います。
これは、逸材だと思います。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
蜷川幸雄
■出演
ルイ ・・・ 吉高由里子
アマ ・・・ 高良健吾
シバ ・・・ ARATA
（その他のキャスト）
あびる優 ソニン 市川亀治郎 井手らっきょ
小栗旬 唐沢寿明 藤原竜也
■コピー
痛くないと、感じない。
■Ｌｉｎｋ
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