ウォンテッド
１を倒して
１０００を救う
ウェスリー・ギブソンは冴えないサラリーマン。上司には無能の烙印を押され、同居中の彼女は同僚に寝取られ、しかもそれをどうする事も出来ない男だった。
ある日、彼はドラッグショップで謎めいた美女に出会う。その美女を襲う殺し屋との銃撃戦に巻き込まれ、意識を失った彼が連れ込まれた場所・・・そこは１０００年の歴史を持つ暗殺集団フラタニティのアジトだった・・・
主人公ウェスリーを演じるのは「ナルニア国物語」の”タムナスさん”ことジェームズ・マカヴォイ。彼をフラタニティに導く美女、フォックスにアンジェリーナ・ジョリー。
原作はマーク・ミラーとＪ・Ｇ・ジョーンズの同名グラフィック・ノベルで、これをロシア映画「ナイト・ウォッチ」で注目されたティムール・ベクマンベトフが大抜擢されて監督しています。
この映画の特色は、何と言っても実写と、高度なＳＦＸを組み合わせて作られた、リアルだが荒唐無稽なアクションシーンの数々。
高層ビルの窓を突き破った人間が、ガラスの破片を身にまといながら、銃を射ち、敵を倒しながら向かいのビルまで飛び移るオープニングと、ウェスリー最初に出会す銃撃戦とカーチェイスがその真骨頂。観ている方としてはまず、これに圧倒されます。
従来のハリウッドアクションとはひと味もふた味も違う、ベクマンベトフ監督の創造力が健在なのには嬉しくなります。
はた織機の生み出す暗号の命じるまま暗殺を繰り返すフラタニティは、単純な勧善懲悪のヒーローではあり得ません。フラタニティは、はた織機という神を崇拝し、そのメッセージを忠実に実行しようとする過激で危険なカルト宗教団体と言ってもいいでしょう。
この職人が秘密結社を構成していると言うのは、元々、石工たちの組合であったフリーメーソン、あるいはイルミナティに通じるものでしょうか？
それにカルト宗教色まで乗せてしまうと言う、タブーを冒してしまう辺りは、やはりロシア人のベクマンベトフ監督の持ち味なのかもしれません。
アクションシーン満載の活劇映画だけど、流血や、刃物や銃弾が肉体を破壊するシーンを避けない描写はどぎつくもあり、映画に爽快感はあまりありません。
しかし、居場所のない主人公が、「自分は何者か」を知る物語は骨太のもの。そして、その物語の中で、主人公は漸く己が何者なのかを知った所で映画は終わります。
世界観もしっかり作られているので、これは続編も期待出来そうです。
（９月２０日 ＴＯＨＯシネマズ海老名にて）
（作品データ）
■監督
ティムール・ベクマンベトフ
■出演
ウェスリー・ギブソン ・・・ ジェイムズ・マカヴォイ
“フォックス” ・・・ アンジェリーナ・ジョリー
スローン ・・・ モーガン・フリーマン
（その他のキャスト）
テレンス・スタンプ トーマス・クレッチマン コモン マーク・ウォーレン
デヴィッド・パトリック・オハラ コンスタンチン・ハベンスキー ダート・バクタデツ
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