バンテージ・ポイント
スペインのサラマンカで開催された国際首脳会議。会議の成否を握っているのは、アメリカのアシュトン大統領だ。その大統領が、大勢の群衆とテレビカメラの目の前で何者かに狙撃された。続いて起きた大規模な爆発。
厳重な警備の隙を突いて、いったい誰が大統領を撃ったのか。物語はここから、２３分前に遡る・・・
これは、大統領狙撃という大事件を最初にテレビニュースの取材スタッフの視点で見せ、その後何度も時間を巻き戻しながら、同じ事件をシークレットサービスの視点、地元刑事の視点、アメリカ人旅行者の視点、大統領自身の視点など、複数の視点から描いていくサスペンス映画です。
この複数の「視点」を描く事が、この映画の最大の特色。
ひとつひとつの視点は、他の視点にはない独自性と優位性を必ず持っているけれど、その視点から物事の全体像を見渡せるわけではなく、それを見る人によっても「判る事」が変わって来ます。
映画は登場人物それぞれの「視点」を寄せ集めながら、大統領暗殺という犯行の核心に迫っていきます。
これは、一見、「羅生門」パターンに思えるのですが、「羅生門」ではそれぞれの視点から見る事件の描写が大きく食い違っていくのに対して、この「バンテージ・ポイント」にそうした趣向はなく、真実はひとつ。
この映画が描いているのは、ひとつの事件に対する複数の視点からの情報であり、あたかもパズルのピースのようにバラバラに配置された事件の真相につながる断片です。
本来、決して個人が見る事の出来ない「情報」を観客に与えます。
まぁ、こうした描写に例がない訳ではありませんが、下手すると複雑なだけで浅いドラマになってしまう所を、映画で描く時間を狙撃事件の前後数十分間に限定し、しかも、僅かな芝居で観客を世界に引き込む事の出来るている一流の俳優を揃える事でドラマの浅さを補いました。
斬新な手法とその手法に合った素材ががっちりかみ合うことで、この映画は見事なまでに面白いものになったと思います。
（３月１０日 １０９シネマズＭＭにて）
（作品データ）
■監督
ピート・トラヴィス
■出演
トーマス・バーンズ ・・・ デニス・クエイド
ハワード ・・・ フォレスト・ウィティカー
（その他のキャスト）
マシュー・フォックス シガーニー・ウィーヴァー ウィリアム・ハート アイェレット・ゾラー
エドガー・ラミレス エドゥアルド・ノリエガ サイード・タグマウイ
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目を凝らせ――。
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