４分間のピアニスト
刑務所でピアノを教える老女教師のトラウデ。彼女はそこで、何事にも反抗的で、暴力的な行動を繰り返すジェニーという若い女囚と出会う。
しかし、机を叩くジェニーの指先の動きからその才能を見抜いたトラウデは、コンクールでの優勝を目指して個人レッスンを開始するが・・・
この映画を、才能のある不良少女が優秀な教師に出会い、心を入れ替えて才能を開花させていく・・・と言う、ありきたりの物語と思うと、裏切られます。
この映画、教師も少女も一筋縄ではいかない強烈なエゴの持ち主で、かつ悲惨なトラウマを抱えているのです。
教師はかつて愛する対象を失って、愛する気持ちを封印しており、少女は、かつて愛した全てに裏切られ、何事も信じられない。
そんな２人が簡単に心を入れ替え、人が変わる訳がありません。
出会い、ぶつかり、心に奥に隠したものまで曝け出し・・・それでも尚、２人は判り合えないままで最後のステージに臨むのです。
そんな２人を辛うじて繋ぐのが、音楽です。
これは、もう素晴らしい演奏の数々。
まず、心動かされたのは、刑務所で両手を後ろ手に手錠に拘束されたままで演奏するジェニーの姿。
そんな状況でありながら、その音楽は、奔放で力強く羽ばたきます。
これには思わず鳥肌が立ちました。
そして、圧巻は何と言ってもクライマックスの演奏。
クラッシック・ピアノのコンテストなのにも関わらず、「自分だけのピアノ」の表現に挑み、そこに見事に世界を作り上げたジェニーの演奏・・・
ピアノとは打楽器である、と言う事を思い知らされる、その超絶技巧の演奏には、オペラ座の観客を総立ちにさせるのも当然と思わせるだけの力がありました。
その才能を世に送り出せた事でトラウマから開放され、愛すべき対象にキスを送った教師。
自分の居場所を見つけた事で、初めて頭を下げた少女。
その手を手錠に拘束されても、その心は既に解き放たれ、未来へ立ち向かう勇気を得ているのです。
これは見事なラストでした。
PS
この作品には２人の日本人ピアニストが参加しています。
劇中でシューベルトを奏でた木吉佐知美と、衝撃のクライマックス曲を演奏した白木加絵。こちらにも注目。
久しぶりにサウンドトラックが欲しくなった映画です。
（１１月１８日 １０９シネマズＭＭにて）
（作品データ）
■監督
クリス・クラウス
■出演
トラウデ・クリューガー ・・・ モニカ・ブライブトロイ
ジェニー・フォン・レーベン ・・・ ハンナー・ヘルツシュプルング
（その他のキャスト）
スヴェン・ピッピッヒ ヤスミン・タバタバイ ヴァディム・グロウナ リッキー・ミューラー
ステファン・クルト ナディア・ウール ペーター・ダフォア
■コピー
弾く時だけわかる。何のために生まれてきたか。
■Ｌｉｎｋ
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