東京タワー
オカンとボクと、時々、オトン
これは、イラストに多彩な才能を発揮するマルチタレント、リリー・フランキーの自伝的小説の映画版。
酔うと暴れるオトンに愛想を尽かし、幼いボクを連れて故郷の筑豊に戻ったオカン。
絵描きだったオトンの影響か、１５歳になったボクは美術高校に入学、独り暮らしを始める。そんなボクのために、オカンは懸命に働き、仕送りを続けてくれたのだけど・・・
高度経済成長の後の、無気力世代（「新人類」とか言われたものです）の半生を描き、その中に人としての当たり前の教訓をさりげなく盛り込んで来るこの映画は、地味な内容ながら、じんわりと心に染みてくるような暖かさを持っています。
自分を想い、支えてくれる人に「ありがとう」と感謝する心。その人のために「がんばろう」という気持ち。
そんな当たり前の事・・・「親孝行」。
無くしかけて始めて気付く、これは、そんな「ボクの親孝行の物語」なのです。
この物語、テーマと展開からして、下手すると、お涙頂戴や、押し付けがましい人情ドラマになってしまう所を、ボクのキャラクターと、淡々とした語り口で、そうは見せない辺りもなかなか。後味も悪くありません。
これも、リリー・フランキーの才能でしょうか。
この映画、そうしたテーマを抱える物語もよければ、キャストもいい。
その中でも、「どう演じてもリリー・フランキーさんになってしまう」と、オファーを半年に渡って断った挙げ句に受けた、オダギリジョーの存在感と演技は、その苦悩の末の決断のなせる業でしょうか、これは今までで最高の演技ではないでしょうか？
確かにリリー・フランキーになっていて、しかも、立派にオダギリジョーの芝居になっているのです。
また、親娘二代で、オカンを演じた樹木希林と内田也哉子（実の親娘だけに顔がそっくりで違和感なし）も素晴らしい。
また、様々なカメオ出演も含め、キャストはいずれも実力派・個性派揃い。
その競演も見所でしょう。
その中でひとり挙げるとすれば、ボクの同級生を演じた勝地涼。
今までの役になかった役、しかも、オダギリジョーの向こうを張っての熱演、これもまた大したものです。
うん、これはいい映画・・・傑作、です。
（４月２４日 ＴＯＨＯシネマズ川崎にて）
（作品データ）
■監督
松岡錠司
■出演
ボク ・・・ オダギリジョー
若い頃のオカン ・・・ 内田也哉子
年取ったオカン ・・・ 樹木希林
オトン ・・・ 小林薫
（その他のキャスト）
冨浦智嗣 田中祥平 谷端奏人 渡辺美佐子 佐々木すみ江
原知佐子 結城美栄子 猫背椿 伊藤歩 勝地涼 平山広行
荒川良々 辻修 寺島進 小島聖 吉本菜穂子 光石研
千石規子 仲村トオル 土屋久美子 小泉今日子 板尾創路
六角精児 宮崎あおい 田口トモロヲ 松田美由紀 柄本明
田中哲司 塩見三省 岩松了 江本純子 安藤玉恵 栗原瞳
麻里也 竹下玲奈 小林麻子 ぼくもとさきこ 中沢青六
市野世龍 蟹江一平 上野真未 梅田愛子 花井京乃助
作間ゆい 宇野祥平 鈴木晋介 野間れい 戌井昭人
狸穴善五郎 吉井有子 金子清文 松たか子
■原作
リリー・フランキー
■コピー
オカン、ありがとうね。
■Ｌｉｎｋ
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