ステップ・アップ
これは、多くの映画で振付師として活躍してきたアン・フレッチャーの監督デビュー作。
ボルチモアの貧困地域で育った高校生タイラー。悪友との悪ふざけの末に裁判所送りとなったタイラーは、アートスクールでの勤労奉仕を命じられた。
そこで、タイラーは、卒業制作に向けて熱心に練習に励むバレリーナのノーラに出会う。
そんな時、ノーラのダンスパートナーが怪我をしてしまい、困り果てた彼女を見かねたタイラーは代役に名乗り出るが・・・
青春映画と言うジャンルは、概ねゴールが見えているもの。
だからこそ、その題材の選択と、料理の仕方が腕の見せ所です。
この映画では、ヒップホップ系のストリートダンスと、クラシックバレエの組み合わせという新機軸が、貧しい青年と裕福な令嬢という定番のカップルの２人のドラマに個性的な魅力を出しています。
こうしたカップルの恋愛劇で定番の、境遇や家庭の問題が、２人の仲を割く事はなく、映画の描写の中心は、あくまでダンス。
ストリートダンスとバレエが融合し、新しい何かを生み出して行き、その中で、お互いがかけがえのないパートナーになっていく描写がされています。
これは、青春ドラマとして、また、恋愛ドラマとして、なかなか面白い内容。
また、音楽も、クラシックとヒップホップを融合させたもので、そちらも、もう一組のカップルの恋愛劇を絡めて描くと言う、あたかも二重奏のような凝った構成になっている映画です。 もっとも、こうした取り組みは意欲的なのですが、初監督のアン・フレッチャー、ダンスの振付けは手慣れたものですが、肝心のドラマがちょっとばかり舌足らずな感じで、映画の尺の短さ（１時間４０分）もあって、今ひとつドラマの深みに欠けた感じなのが残念です。
もっとも、ダンスの方は、これは見事なもので、オープニングのヒップホップの音楽で見せるクラシックバレエに始まり、ぎこちなかった２人のダンスが、２人の仲が深まるにつれて息があったものになっていく演出もいいし、途中のディスコダンスもなかなか。
圧巻は、やはりクライマックスのダンスシーンで、これは見事なステージです。
主役２人は、まだほぼ無名なのですが・・・ハリウッド映画の常として、年齢はやや高め。高校生を演じるにはちょっと辛い感もありますが、そこは初主演の初々しさで乗り切った感じでしょう。
それにしても、ノーラ役のジェナ・ディーワンはいいですねぇ。鍛え上げられたプロポーションは、健康的なセクシーさに満ちた見事なもの。そのキレのある踊りと合わせ、この映画の最大の見所が彼女だと思います。
タイラー役のチャニング・テイタムは、ダンスを本格的にやるのは、この映画が初体験。それであれだけ踊ってみせたのですから、こちらは敢闘賞と言う所でしょう。
初監督に初主演。プレッシャーも勿論あったと思うのですが、この映画には、その中で描かれているように、様々なジャンルの内容を飲み込んで融合する、と言う懐の広さを見せつつ、自らの道を切り拓こうとする勢いを感じました。
見終わって後味も爽やかな、これは、なかなかしっかりした青春映画です。
（３月１７日 ＭＯＶＩＸ本牧にて）
（作品データ）
■監督
アン・フレッチャー
■出演
タイラー ・・・ チャニング・テイタム
ノーラ ・・・ ジェナ・ディーワン
（その他のキャスト）
マリオ ドリュー・シドラ ヘヴィーＤ ダメイン・ラドクリフ
ディシャウーン・ワシントン ジョシュ・ヘンダーソン レイチェル・グリフィス
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この一瞬に夢をかけて。
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