カンバセーションズ
マンハッタンのホテルで行われた知人の結婚パーティに出席した”彼”は、部屋の隅で退屈そうにタバコを吸う”彼女”を見かけ、思わず声をかける。
ふたりは若い頃、恋人同士であったのだけど、その後、離ればなれになり、今や互いに別のパートナーが出来ている。近況報告と気持ちの探り合い。ふたりの気持ちは接近し、その夜、”彼”は”彼女”の部屋で過ごす事になるのだが・・・
映画は、ほとんどがふたりの会話だけ進行する、舞台のふたり芝居のような内容。
しかし、この映画の最大の特徴、そしてこの作品が映画でしか描けなかった理由、それは横長のシネマスコープ画面を左右に二等分し、それぞれに異なった映像を映し出す「デュアル・フレーム」の採用です。
画面の右と左に異なった視点、異なった時間の映像を配置。一方に男が、もう一方に女が配置されることもあるし、一方に現在、もう一方に過去の主人公たちが配置されることもある。時間をずらして同じシーンを再現したり、現実には存在し得ない別の可能性としての会話シーンが併走する場合もあります。
この手法自体は決して珍しくはないのだけど、最初から最後まで、通しでやった所がこの映画のすごい所です。
分割された画面は、場面転換の少ないドラマに目の離せない緊張感を生み出し、男と女、過去と現在を隔てる、消したくても消せない、越えたくても越えられない境界線を象徴します。
しかも、観客自身、同時に２つを観る訳には行かず、画面のどちらかを「選択」しなければなりません。
その結果、この映画は、様々な観方と受け取り方が出来てしまうのです。
深読みの出来る物語、癖のあるキャスト、そしてこれまた１枚のコインの裏表のような存在である、「男」と「女」を描く事で、この映画は、この手法での最大限の効果を上げたように思います。
映画のキモが編集にあるとすれば、この映画は画面をふたつ同時進行させることで、編集の複雑さが途方もなく増していく。
しかも、この映画、その編集が重要な演出要素であるのです。
どうも、当初の編集者は、余りに困難な作業に逃げ出してしまい、結局、監督自身が編集したとの事ですが・・・そうした苦労の結晶、映画と言う表現の可能性を掘り下げて見せたこの映画、一見の価値ありです。
（２月２２日 川崎 チネチッタにて）
（作品データ）
■監督
ハンス・カノーザ
■出演
彼 ・・・ アーロン・エッカート
彼女 ・・・ ヘレナ・ボナム・カーター
（その他のキャスト）
ノラ・ザヘットナー エリック・アイデム ブリアナ・ブラウン ブライアン・ジェラーティ
オリヴィア・ワイルド トーマス・レノン セリナ・ヴィンセント フィリップ・ドリル
■コピー
男はズルいロマンチスト、女は罪なリアリスト
■Ｌｉｎｋ
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