それでもボクはやってない
「Ｓｈａｌｌ ｗｅ ダンス？」より１１年。周防正行監督久々の新作は、日本の裁判制度を取り上げた、かなり硬派の社会派映画。
周防監督は、４年間に及ぶリサーチで、日本の裁判制度の問題を洗い出し、映画的な手法でそこに切り込んで行きます。
フリーターの金子徹平は、就職の面接に向かう満員電車の中で「痴漢だ」と腕を捕まれた。
釈明のつもりで警察署に同行した徹平は、そこで刑事にいきなり犯人扱いされてしまう。やったと認めて被害者と示談に入ればすぐ開放される、と言われはしたが、やってもいない事を認められず、徹平は無罪を主張。だが、警察でも検察でも、その主張は聞き入れられず、容疑否認のまま起訴されてしまう・・・
この映画、冤罪が生まれる過程を詳細に描き、裁判が真実を明らかにするというのは幻想だと訴えます。
その内容、とても笑いを得るようなものではない（先行上映されたアメリカでは観客の笑いがあったそうだけど、それはまるで不条理劇のような日本の裁判制度に対する笑いなんだろうなぁ・・・）けれど、冒頭からテンションを一気に盛り上げ、そのまま一気に引き込んで見せる力技には圧倒されました。
過度なオーバーアクションの芝居もなく、リアルで淡々とした描写に徹しますが、そこには息の詰まるような法廷劇のサスペンスがあり、立派にエンターテイメントになっている、これは、一級の娯楽作です。
この映画は、逮捕から公判にいたる手続きをつぶさに再現し、裁判制度を手際よく解説します。
そこで描かれるのは、一度、起訴されたら９９．９％有罪判決が出る、日本の裁判制度。
それは、日本の捜査機関と検察機構の優秀さを示すものではありますが、いささか機械的な、犯罪者を作り出すメカニズムとも言えます。
この映画が描くのは、日本の治安と安全を守って来た、そのシステムの僅かな綻びであるかもしれません。
でも、優秀であるが故に一度巻き込まれたら抜け出せない、そんな危険が身近にあるのも現実ではあるのです。この映画は、そんな事を知らしめる、ちょっと背筋が寒くなるような内容です。
これ観ると、男性は、満員電車に乗るのが怖くなりますよ。
（１月２１日 ＴＯＨＯシネマズ川崎にて）
（作品データ）
■監督
周防正行
■出演
金子徹平 ・・・ 加瀬亮
（その他のキャスト）
瀬戸朝香 山本耕史 もたいまさこ 田中哲司 光石研
尾美としのり 小日向文世 高橋長英 役所広司
大森南朋 鈴木蘭々 唯野未歩子 柳生みゆ 野間口徹
山本浩司 正名僕蔵 田口浩正 徳井優 清水美砂
本田博太郎 竹中直人 益岡徹 北見敏之 田山涼成
大谷亮介 石井洋祐 菅原大吉 大和田伸也
■コピー
これが、裁判。
■Ｌｉｎｋ
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