ダニエラという女
モニカ・ベルッチが男たちを虜にする美しい娼婦ダニエラを演じる、ベルトラン・ブリエ監督のラブ・コメディ。
主人公のフランソワは、会社勤めの平凡な中年男。たまたま買った宝くじが大当たりし、彼は、飾り窓で見るだけだった憧れの美しい娼婦、ダニエラに金が続く限り一緒に暮らしてくれ、と持ちかけた。
フランソワは心臓が悪く、極度の興奮は危険なのだけど、それでも彼はダニエラとの暮らしをエンジョイ。だが、そんな彼女との暮らしも、長くは続かなかった。
ある日突然、ダニエラは部屋から姿を消してしまったのだ・・・
このコメディは、かなり辛辣で、捻くれたものと言えるでしょう。
どんなに愛し合う恋人同士でも一緒にいれば、お互い負の部分が見えてくるし、飽きも来る。
一方で、障害が２人を引き裂く時、その距離こそが愛情を純化する事もある。
恋愛とは２人が共に暮らす事で終演を迎えるのではなく、そこからくっついたり、離れたり・・・気持ちの上でも幸せなだけでなく、悩み、苦しみ、嫉妬し・・・そうした愛憎取り混ぜ、喜び、悩み、苦悩する２人を映画は追いかけて行きます。
こうして書くと、結構、ドロドロしたドラマになってしまいそうですが、この映画が、それでも笑えるものになっているのは、現実のリアリズムを無視し、観念的なものになっているからでしょう。まるで、舞台演出のような照明や場面の転換や音楽が異化効果を生み出し、観客はスクリーンの中の世界に気持ちを入れる事が出来ないのです。
もっとも、そうした凝った演出手法は万人向けとは言い難く、中盤以降は、正直、物語が発散気味で、何とも落ち着きません。このドラマは観客を選びそうです。
しかし、モニカ・ベルッチは４０歳を過ぎてますます美しい。撮影時には出産直後だったそうで、母となり、今までに増して豊満なその姿は、正に生けるヴィーナス像。
物語はともかく、この”イタリアの至宝”を鑑賞するだけでも価値ありの映画です。
（１月５日 銀座シネパトスにて）
（作品データ）
■監督
ベルトラン・ブリエ
■出演
ダニエラ ・・・ モニカ・ベルッチ
フランソワ ・・・ ベルナール・カンバン
（その他のキャスト）
ジャラール・ドパルデュー ジャン＝ピエール・ダルッサン
■コピー
特技は愛されること。
■Ｌｉｎｋ
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