王と鳥

　夏休み、映画三昧の１日の１本目は、「王と鳥」。

　これは、’５２年に「やぶにらみの暴君」として公開された、フランス・アニメの巨匠、ポール・グリモー監督の名作アニメを監督自らが再編集し、’７９年に「王と鳥」として完成させたもの。
　どうやら、「やぶにらみの暴君」は監督の意に染まぬ形で公開されたそうで、グリモー監督は、作品の権利を買い戻して、再編集を行いあらためて完成させた、とのこと。

　物語の原作はアンデルセン。
　高い塔を持つ城に住む王様が、絵の中の羊飼いの少女に恋をするのだけど、少女は、別の絵の中の煙突掃除の少年と共に絵から抜け出し、逃げ出してしまう。
　・・・あとは、終盤まで逃げる２人を追いかける追走劇。

　これは、宮崎駿監督に多大な影響を与えた作品、と言う事で、様々な宮崎アニメの原点がここにある、と言う点でも興味深い作品。
　「未来少年コナン」に見られる、上下関係をそのまま社会構成になぞらえた世界観や、「カリオストロの城」で出て来た落とし穴な、城の塔と言った舞台装置。
　更にキャラクターの造形、丸みのあるメカニズムの描写、高さの恐怖感をあおる演出など、宮崎アニメがこの作品から受け継いだものは数多いです。

　作品自体も、ディズニーとはひと味違った、風刺と、いささかケレン味のある内容となっていますし、平面的なディズニーアニメと異なり、奥行きのある画面構成、美しくも切ない音楽など、見所は多いです。
　ただ、確かに、興味深く、よく出来た作品ではあるのですが、古い作品だけにテンポがゆったりしているせいでいまいち乗り切れず、終盤、昨日の疲れもあってうとうとしてしまい、クライマックスの記憶が残っていないのがちょっと残念。勿体ないことをしました。

　（８月１７日　渋谷　シネマ・アンジェリカにて）

［戻る］