最終兵器彼女

ぼくたちは、恋していく。

　日曜日、休日出勤の仕事を早めに切り上げ、１０９シネマズＭＭで「最終兵器彼女」を観て来ました。

　これは、ビッグコミック・スピリッツで連載された高橋しんの同名コミックを、須賀大観監督が実写映画化した作品。
　主演は前田亜季と窪塚俊介だけど、ふたりともパッとした印象がなく、魅力に欠けるのが残念。特に、ちせ役の前田亜希は、この映画では何故かカメラ写りが悪く、かわいく見えないシーンが多いのが困りもの。また、窪塚俊介も、演技に精彩を欠き、とても映画の主役とは思えません。

　物語の舞台は北海道・小樽市。
　高校３年生のシュウジは、同学年のちせから告白されて彼女と付き合うことになる。でも「付き合う」と言っても、具体的に何をしていいのかよくわからない。とりあえず交換日記を始めたものの、シュウジは照れもあって何を書いていいのか判らない始末だ。
　そんなある日、友人たちと札幌に出かけたシュウジは、突然、街が空襲される現場に遭遇する。その時、敵機を撃墜してシュウジを助けたのは、背中から機械仕掛けの翼を生やしたちせだった。
　彼女は外敵から日本を守るため、自衛隊によって肉体を改造された「最終兵器」だったのだ・・・

　自分たちのまったく知らないところで日本が戦争に巻き込まれているが、完璧な情報管制によってそれが市民にはまったく伝わっていないという設定や、ちせが改造人間になったいきさつ、そもそもちせが改造された「最終兵器」の設定に至っては荒唐無稽もいいところ。
　でも、この物語において、それはそれでいいと思います。
　この物語は、人が人でなくなる、戦争と言う特殊環境で、「恋愛」が、人をどう支えて行くかを描いて行くものです。
　荒唐無稽な設定は、「戦争」と言う特殊環境を読者に引き寄せる為の仕掛けですし、「最終兵器」の設定も、戦争が人を変える、と言う事を見た目で判り易くする為、と見ていいでしょう。
　一方、登場人物を幼くし、初めての恋とする事で、「恋愛」と言うものを純粋に見せていく・・・この物語はなかなか巧妙に出来ています。
　
　しかし、映画は、その本来、ピュアである物語を上手く描けているとは思えません。
　映画全体に言える事ですが、低予算映画の癖に、妙に欲張った感じが強く、それ故に安っぽく、貧乏臭い感じになってしまっています。
　一例を上げれば、空襲のシーンで稚拙なＣＧで飛行機飛ばすから、ちゃちに見えるのです。
　現代戦では空襲はミサイルで行われますから、それこそ弾着の爆発だけ描写するようにし、後は演出でカバーすれば、余程リアルに見えるでしょう。
　陸戦シーンだって、無理に入れる程の内容ではないように思えます。
　そうした余分に見えるエピソードを削り、主人公２人の「気持ち」を丁寧に描く事こそが、この映画の為すべき事だったように思えます。
　所詮、この物語では、「戦争」など主題となるラブストーリーの背景描写に過ぎないのですから・・・

　この映画、とにかく勿体ない、と言う感じが強いです。
　主演の２人については先に述べた通りですが、それ以外にも、俳優の魅力を引き出せていない演出、派手に使い過ぎて安っぽくなったＶＦＸ、詰め込み過ぎて散漫になったエピソードと、せっかくの物語の魅力を活かせていない仕上がりには、もどかしささえ感じます。

　人は誰かを愛する事で強くなる・・・それを見事なビジュアルで描いてみせた映画のクライマックスと、エピローグはなかなか感動的だっただけに、そのに辿り着くまでツッコミどころ満載だった映画の完成度の低さが何とも勿体なく感じました。

　（２月１２日　１０９シネマズＭＭにて）

（作品データ）

　■監督

須賀大観

　■出演

　チセ　　・・・　前田亜季
　シュウジ・・・　窪塚俊介

（その他のキャスト）
　木村了　　貫地谷しほり　川久保拓司　二階堂智
　津田寛治　渋川清彦　　　酒井美紀　　伊武雅刀

　■コピー

恋しているから、彼女<ひと>でいられる。

　■Ｌｉｎｋ

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