私の頭の中の消しゴム

　土曜日、休出した後、久々につきみ野に行って、映画を１本。

　映画は、「私の頭の中の消しゴム」。
　若年性アルツハイマー症に襲われたカップルの悲劇を描いたＴＶドラマ、「ピュア・ソウル〜君が僕を忘れても」を元にした韓国映画です。

　同僚の男性と不倫し、破局したスジン。その傷も癒えた頃、建設会社社長の父と共にビルの建築現場を訪れた彼女は、現場監督として働くチョルスの姿を見て驚く。
　健忘症の気があるスジンだったが、以前コンビニで勘違いから失礼な真似に及んでしまった彼のことはなぜか覚えていた。
　やがて、２人は恋に落ち、結婚。
　チョルスは建築士の資格をとって建築家として独立を果たし、順風満帆に見えた２人を不幸が襲う。
　物忘れが更にひどくなり、自宅への帰り道さえ覚束なくなったスジンが、念のため、病院で診察を受けた所、スジンが「若年性アルツハイマー症」であると診断されたのだ・・・

　この映画、主役のカップルを演じた２人が魅力的。
　無精ひげが似合う野性的な風貌のチョン・ウソン演じるチョルスと、可憐で清楚なソン・イェジン演じるスジンは、一見して不釣合いかと思いきや、相性ピッタリ。
　幸せに満ち溢れた2人の生活を見せつけられても、まるで嫌味がありません。
　特にソン・イェジン、いいですねぇ。
　序盤の濃いメイクは「あれ？」と思ったのだけど、ナチュラルメイクにしてからは、文句なしです。
　ほっそりとしてスタイルよく、控えめで清楚、よく変わる表情はチャーミングで、甘える仕草も嫌味がなく、魅力的です。

　映画は、全１２話に及ぶドラマの主要なエピソードをかなり無理をして詰め込んだのでしょうか、主役２人以外の周辺のドラマの描き込みが足りない感じです。
　特に、チョルスと母親の和解については、映画では全然進展が判りませんでした。

　また、この映画は、聖書のイエスのエピソードをモチーフにしているようですね。
　チョルスが建築家（＝大工）なのも、無精ひげの野性的な風貌なのも、イエスのイメージと考えればしっくり来ます。
　元のドラマを２時間の映画にまとめる際に、聖書のイエスのエピソードを主軸に据えた、と言う感じでしょうか。
　はらは、その方面の知識が薄いので、そうした表層的なイメージしかわからないのですけど、聖書をよく知る人には、より深く感じさせるドラマになっているのではないか、と思います。
　逆に言うと、そうした部分がないと、この映画、同様の内容の「きみに読む物語」に比べても、明らかにひねりも工夫も感じられないのです。

　映画終盤、2人に訪れる悲痛な運命と、その中でチョルスが起こした小さな奇跡。
　観客の紅涙を搾り取るシーンの筈ですが・・・心が乾いているせいでしょうか、はらの涙腺は最後まで素直に反応することはありませんでした。

　（１１月２６日　ＷＭＣつきみ野にて）

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