バタフライ・エフェクト

　これは「ある場所で蝶が羽ばたくと、地球の裏側で大嵐となる」とのたとえ話で知られるカオス理論を取り入れたタイムトラベルものＳＦ。
　幼馴染を救うために、過去を書き換えようとする男が直面する出来事を描いて行きます。
　主演は、アシュトン・カッチャーで、製作総指揮も彼が務めています。

　少年時代のエヴァンは、幼馴染みのケイリーと別れる時「君を迎えに来る」と誓った。だが、過ぎ行く時の中で、エヴァンは、ケイリーと別の道を歩んでいた。
　ある日、エヴァンは少年時代につけていた日記を見つけ、それを開いた時、“それ”は起きた。
　気がつくと、エヴァンは少年に戻って“あの日”にいた。
　そして、少年時代、どうしても思い出せない“空白の記憶”の瞬間、エヴァンはちょっとしたいたずらをした。
　現実に戻ったエヴァンは、あの頃の友に出会いたくなって、旧友を訪ねるが・・・彼らの人生が、エヴァンの知るものとは大きく変わっていた。あの時の“いたずら”によって、彼らの人生は変わってしまったのだ・・・！

　これは非常によく出来た物語。
　エヴァンには、少年時代、時折記憶が途切れてしまう事があり、日記を開く事で、その途切れた記憶の時間に戻って「何か」をする事が出来る。その「何か」は記憶にないし、日記にも書かれていない・・・何が「正解」かは判らず、ただ何かをすると確実に現在が変化する、と。
　まるで詰め将棋のように、「何をどうすればどうなるか」を予測はするのだけど、そこに「カオス理論」が取り入れられているものだから、その決断が未来を大きく変えてしまうのです。
　
　偶然、タイムリープして空白の記憶の中である決断をしたエヴァンが、ケイリーを思わぬ不幸に墜としてしまい、ケイリーを救い出そうと、繰り返し過去に戻っては決断をやり直す、と言うのがこの物語の展開。
　救おうとしたケイリーをもっと酷い境遇に追い込んでしまい、これではなかったか、と改変をやり直すと、今度はケイリーは救えたのだけど、家族が不幸になってしまいます。それでは、と選択をやり直すと、今度は自分が不幸の底に・・・となってしまう、と言うこちらを立てればあちらが立たず、の状況。
　まぁ、時間旅行による歴史改変が必ずしも幸せを呼ばない、と言うのは、それこそ「ドラえもん」でも幾度も取り上げられた内容で、それ故、これを“大人向けの「ドラえもん」”と言う人もいますが・・・それにしても、これは辛辣な内容です。　
　考え抜かれた脚本に、正に“詰め将棋”的な展開。知的でありながら、ロマンスもたっぷりだし、ドタバタギャグもあれば、後半にはサスペンスフルな展開となって観客をぐいぐいと引き込みます。
　また、様々に変わる状況、その中で、まったく違う一面を見せる俳優たちの姿も見所のひとつ。
　ケイリー役のエイミー・スマートは、美しい女子大生から、冴えないウェイトレス、そして場末の娼婦、と様々なケイリーを演じ、殆ど別人のような幅を見せています。

　エヴァンの最後の決断は、なんともホロ苦くて切ないもの。
　数多の映画が運命の出会いと恋を描いて来ましたが、この映画が辿り着くのは、どうやっても“運命の出会い”にはならない２人がいる、と言うものなのですから・・・　　

　（２００５年　６月　１日　１０９シネマズＭＭにて）

（作品データ）

　■監督

エリック・ブレス　

　■出演

　エヴァン　・・・　アシュトン・カッチャー

　ケイリー　・・・　エイミー・スマート

（その他のキャスト）
　エルデン・ヘンソン　　ウィリアム・リー・スコット　　ジョン・パトリック・アメドリ　　アイリーン・ゴロヴァイア　　ケヴィン・G・シュミット
　ジェシー・ジェイムズ　　ローガン・ラーマン　　サラ・ウィドウズ　　ジェイク・ケーゼ　　キャメロン・ブライト　　メローラ・ウォルターズ
　エリック・ストルツ　　カラム・キース・レニー　　ロレーナ・ゲイル　　イーサン・サプリー　　ケヴィン・デュランド

　■コピー

きみを救うため、ぼくは何度でも過去に戻る。　

　■Ｌｉｎｋ

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