マシニスト

すでに１年間３６５日眠っていない。

　今日は、渋谷に行ってシネクイントで「マシニスト」を観る事に。

　これは、主演のクリスチャン・ベールが役作りのため２８キロ以上減量し、骨と皮ばかりになっているのが話題の映画。
　今までも、役作りのために体重を増やしたり減らしたりする俳優はたくさんいたけれど、ここまで極端に体重を落とした役者は初めてなのではないでしょうか？
　映画の中でも「これ以上痩せたら死ぬ」と言う台詞があるように、全身から骨格を浮き出させ、歩く骸骨のようになった、その姿は死相すら感じさせる迫力がありました。

　工場に機械工（マシニスト）として勤務するトレヴァーは、重度の不眠症でこの１年間眠ることが出来ない。
　深夜まで空港のカフェで時間を潰し、その後、娼婦と夜明けまで過ごす毎日。
　食欲もなく、げっそりと痩せ、人柄まで変わってしまったトレヴァーを同僚も薄気味悪く思い始めていた。
　そんなトレヴァーは、ある日、同じ工場に勤めるアイバンと名乗る男と出会う。
　だが、ある事故の後、トレヴァーが知ったのは、アイバンと言う男を、工場の誰も知らないと言う事だった・・・・

　映画は、トレヴァーの日常を子細に追いながら、その日常に少しずつきしみのような不協和音を挟んで行きます。
　この辺りは、ホラー映画の常套手段。
　色調を抑えたダークな映像とが生み出す雰囲気と、巧妙に作られた画面構成、そして、丁寧な演出も合わせ、心理サスペンスとしてはオーソドックスながらも秀逸な出来映え。
　これには思わず引き込まれました。
　（まるで夢を見ているような展開にどっぷり浸り、時間を忘れて観ていましたが・・・映画としては、１０４分とそんなに長いものではないのですね）

　そして、映画は、徐々に謎を明かしつつ、最後にドンデン返し的な結末を用意します。
　もっとも、それ自体は、あまりびっくりするようなものではなく、ある意味、予想範囲内。
　ただ、そうした映画の弱さを全てひっくり返してしまうのが、クリスチャン・ベールのやせ衰えた肉体の存在感。
　太ったり痩せたりの肉体改造は演技の本質ではないとは言え、ここまで役作りに徹したクリスチャン・ベールの役者根性には参りました、と言う感じです。

　（２月２７日　渋谷・シネクイントにて）

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