これは、春秋戦国時代の中国を舞台にした原泰久原作の漫画「キングダム」の実写映画版第４弾。
　主人公・信役の山崎賢人を始め、主要キャストは勿論続投で、本作では、物語のキーとなる謎多き将軍・摎役で新木優子が新たに出演。監督は、シリーズ全作を手掛けている佐藤信介。

　秦が趙を迎え撃つ馬陽の序盤の戦いで、敵将・馮忌を討った信ら飛信隊の宿営地に、趙国の総大将・?煖が突如として現れる。自らを武神と称する?煖の強さに圧倒され、更に、趙軍の襲撃もあって宿営地が混乱する中、重傷を負った信を逃す為、飛信隊は決死の覚悟で戦場からの脱出を図る。
　一方、戦局を見守っていた王騎は、?煖の背後に趙の企みと、もうひとりの将の気配を感じていた。王騎は軍を再編成すると、後退する趙軍に対し、武勇に優れる蒙武将軍を差し向けた――だが、これは趙軍の罠だった。敵に取り囲まれた蒙武の隊を救出すべく、王騎将軍自ら前線に赴くのだが……

　本作は、映画「キングダム」シリーズでも異色の内容となります――なにしろ、主人公であるはずの信は冒頭の?煖との戦い以降、活躍が見られず、吉沢亮、橋本環奈、長澤まさみと言う第一作からの主要キャストもほぼ会話するだけ。そんな映画を支配するのは、異様な程の存在感を示す、大沢たかお演じる王騎将軍なのです。
　この第４作は、正に、この王騎将軍の為の映画であり、過去のエピソードも含め、その物語を完結させるために作られていると言っていいでしょう。
　原作もそうなのですが、王騎将軍と言う人物、歴史書には殆ど登場せず、原作の原泰久自身、だからこそ自在に作り込めたキャラクターなのだ、と言います……その初登場以来、敵か味方かも判然としない、ただ器の大きさだけを感じさせる人物が、やがて、作者の思惑さえ超えて物語を支配して行く事になる、と言うのは、正に創作の神秘と言えるのではないでしょうか？
　それは、この映画版にも言え、王騎将軍と言う人物の存在感に加え、演じる大沢たかおの、行き過ぎとさえ言える役作りと怪演が、映画を支配しているのです。
　そんな映画は、序盤の飛信隊の逃走劇こそもたつきますが、王騎将軍がスクリーンの中心になり、采配を揮う様が示されるようになると、ぐっと面白さを増します。
　趙の軍師・李牧との知略戦、そして、まるで怪獣映画のような王騎将軍と?煖の一騎打ち、そして、力業を見せる後退戦と、中盤以降は、ほとんど大沢たかおのワンマンショーと化しており、主人公の影が薄いのだけど、それでも面白いのだから仕方ありません。

　少年の信が、王騎将軍に憧れる所から始まった物語は、その王騎将軍の死によって、一区切りをつけます――現実的には、映画版はこれで終了でしょう。
　現在、７２巻が刊行されている原作のうち、まだ１６巻ほどを映画化したに過ぎませんが、俳優の年齢などの諸事情からも、映画版を締めくくるにはここしかないだろう、と思います。

　（２０２４年　７月１４日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

佐藤信介

　■出演

信　・・・　山�ｱ賢人
?政　・・・　吉沢亮
河了貂 　・・・　橋本環奈

羌かい　・・・　清野菜名

尾到　・・・　三浦貴大

蒙武　・・・　平山祐介

王騎　・・・　大沢たかお

摎　・・・　新木優子

?煖　・・・　吉川晃司

李牧　・・・　小栗旬

カイネ　・・・　佐久間由衣

（その他のキャスト）
　岡山天音　　満島真之介　　佐藤浩市　　濱津隆之　　真壁刀義　　��嶋政宏　　要潤　　玉木宏
　山田裕貴　　高橋光臣　　片岡愛之助　　山本耕史　　長澤まさみ　　萩原利久　　　加藤雅也　　高橋努
　　　　　　　

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忘れられない　
闘いが始まる。
　

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