これは、ジャッキー・チェンが伝説のスタントマンを演じるアクション。
　監督はラリー・ヤン。共演は「崖上のスパイ」のリウ・ハオツン。

　かつて香港映画界で伝説のスタントマンと称されたルオ・ジーロンだが、ある事故をきっかけに第一線を退き、愛馬・チートゥとともに、撮影所見学者への撮影サービスなどの地味な仕事をして日銭を稼いでいた。
　だが、借金取りに追われ、更に、元の会社の債務トラブルによりチートゥが競売にかけられる事となって、困ったルオは、疎遠になっていた法学部の学生でひとり娘のシャオバオに助けを求めることに。仕事に熱中するあまり、家庭を顧みず、離婚した父を受け入れられずにいたシャオバオだったが、母の遺言もあって、恋人の新米弁護士ナイホァをルオに紹介する。
　そんなある日、旧知の縁で、ルオにスタントの仕事が入る。チートゥの思わぬ活躍もあって、再注目されたルオは再びスタントの仕事で引っ張りだことなって行くが……

　本作は、ジャッキー・チェン主演５０周年記念作品となります。
　内容は、ジャッキー・チェン本人とも重なる――と言うか、まるで売れなかったジャッキー・チェン、とでも言うべき、香港映画で身体を張ってアクションシーンを演じ続けた男の物語。そこに、疎遠だった娘との家族再生のエピソードに、思わず目頭が熱くなる愛馬チートゥとの人と馬との絆をも盛り込む、盛りだくさんの内容となっています。いささか詰め込み過ぎのようにも思えますが、そんな過剰な内容も、かつての香港映画、そして、ジャッキー・チェンの映画らしさでしょうか。

　その中で、物語の中心となるのは、映画、それも、アクションシーンに全身全霊を注ぐ主人公・ルオの物語で、そこには、ジャッキーの過去の出演作のアクションシーンも多く盛り込まれているだけでなく、映画内でもジャッキーの十八番とも言える、テーブルや椅子を使い、時にコミカルな立ち回りが幾度もあります。そもそもルオの住む馬小屋兼住居が、アクションを見せる為に巧妙に作られた構造体になっていると言うのも、往年の香港・カンフー映画を知る者には懐かしく思えるものでしょう。
　また、終盤には現在中国のアクション・スターのウー・ジンが登場、ＣＧを駆使した最新技術のアクション撮影に、ルオが「実際に危険に挑まなくて、観客に何を見せるつもりだ？」と問うシーンなど、かつて一時代を築いた先達としてのジャッキーの本音ではないか、と思ってしまいました。
　それだけではなく、本作は映画を通してルオにスタントマンの誇りと自負を語らせるのですが、この辺りは、正に映画「カンフー・フタントマン」が取り上げた、香港アクション映画を支えたスタントマンたちを代表して語っているようにも感じました。そして、それが出来るのは、確かにスタントマンばりに身体を張ってアクションに挑み続けて来た、ジャッキー・チェンならでは、と言う事でしょう。

　そんな映画だけに、最近、アクションを若手に任せる事も少なくないジャッキーも、往年には及ばないながら、久々に達者なアクションを見せてくれます。
　ヒロインのシャオパオを演じるのはリウ・ハオツンは、清楚で少女っぽさを残した感じで、これはジャッキーの好みでしょうか？……さすがに、ロマンスの相手とはならず娘役での起用ですが、最早、孫と言っても違和感がないような感じがしました。
　
　映画は大団円を迎えて気持ち良く終わり、エンドロールにはＮＧ集もついて、最後まで楽しめました。これは、久々にジャッキー・チェンらしい映画で、満足の１本です。　
　

　（２０２４年　６月　１日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

ラリー・ヤン

　■出演

ルオ・ジーロン　・・・　ジャッキー・チェン

シャオバオ　・・・　リウ・ハオツン

（その他のキャスト）
　グオ・チーリン　　ユー・ロン　　グアンディ・オン　　ジョイ・ヨン　　ユー・アイレイ　　シー・シンユー　　レイ・ロイ
　ウー・ジン

　■コピー

これが人生の集大成

［戻る］