メメント
MEMENTE

　これは、クリストファー・ノーラン監督の出世作で、前向性健忘（発症以前の記憶はあるものの、それ以降は数分前の出来事さえ記憶できない症状）という記憶障害に見舞われた男が、最愛の妻を殺した犯人を追う異色サスペンス。
　時間軸を解体して再構築された複雑な構成と巧みな脚本が話題となり、当時、日本でもロングラン・ヒットとなりました。今回はリバイバル上映で鑑賞。

　保険の調査員レナードの家に何者かが侵入し、妻がレイプされたうえ殺害される。その際に殴打された彼は、前向性健忘と言う記憶障害になってしまい、１０分間しか記憶を保つことが出来なくなってしまう。レナードは、ポラロイドにメモを書き、体にタトゥーを刻みながら、復讐の為に、妻を殺した犯人を追うのだが……

　この映画、ある時点からの“過去がない”と言う前向性健忘と言う設定を活かし、結末から、少しずつ時間を遡るうちに、事態が明らかになっていく……と言う構成。発症以前の過去を、モノクロで描く辺りも含め、公開当時は、その巧妙で斬新な構成に驚嘆した事を思い出しました。

　勿論、今となっては、追従する作品も多いですし、クリストファー・ノーラン自身は更に先へ、と進んでいるのですが、本作で見せた、時間を巻き戻し、そして遡り、映画の中で“時間”をコントロールしようとする狙いはこの当時からのものだったのだ、と改めて認識しました。
　あと、映画の中の世界は“仕組まれたもの”と言う、映画の虚構性、そのものをテーマとするのもクリストファー・ノーランらしい所でしょう。

　今観ても、その映画的才能には感嘆するしかない、と言う印象です。　
　

　（２０２４年　４月３０日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

クリストファー・ノーラン

　■出演

レナード　・・・　ガイ・ピアース

ナタリー　・・・　キャリー・アン・モス

テッド　・・・　ジョー・パントリアーノ

（その他のキャスト）
　マーク・ブーンＪｒ．　　スティーブン・トボロウスキー　　ジョージャ・フォックス

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