マンティコア
ｰ怪物-

　これは、「マジカル・ガール」で注目された、カルロス・ベルムト監督の最新作。

　ゲーム会社で、モンスターデザインを担当するフリアンは、社交性には欠けるものの、才能は確かで、会社の機材を自宅に持ち込んで作業する事を認められていた。そんなフリアンは、隣人の少年を火事から救って以来、原因不明のパニック発作に苦しんでいた。
　ある日、同僚の誕生パーティーで美術史を学ぶ学生のディアナに出会ったフリアンは、ボーイッシュでミステリアスな彼女に魅かれていくが……

　この映画ですが、テーマとなるのは、特殊な性指向となります。その点で、昨年公開の「正欲」と同じテーマを扱うものと言えるでしょう。
　フリアンの嗜好は少年愛であり、決して許されないその欲望を、その技術と才能を活かして仮想空間で満たしているのです。
　映画は、これを観客の想像力に預けた形で描き、それが、やがて禁忌すべきものとして周囲から白眼視される様を描くのですが……この描写、二次元のロリコン愛好者が、その趣向を「被害者がいる訳ではないのに、何故非難されるのか？」と自己弁護するのと重なります。この辺り「マジカル・ガール」でも見せた、カルロス・ベルムト監督の日本のアニメ・マンガ文化への理解が活かされたもの、と言えるのではないでしょうか、

　映画は、終盤、フリアンの性指向が会社にバレて、機材を取り上げられたフリアンが、欲望を満たす事が出来なくなった結果、実際に少年を性対象にしようとするサスペンスを描きますが、この展開には考えさせられます……マンガで、ゲームで、アニメで、欲望を満たしている者が、それを取り上げられた時にどうなるか、と……
　そして、映画は更にもうひとひねり。ディアナの隠された欲望を明らかにするラスト――これは蛇足とも思えますし、また、賛否が別れるものと思います……勿論、このトリッキーさがカルロス・ベルムト監督らしさでもあるのでしょうけど。　
　

　（２０２４年　４月２１日　Ｋｉｎｏシネマ横浜みなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

カルロス・ベルムト

　■出演

フリアン　・・・　ナチョ・サンチェス

ディアナ　・・・　ゾーイ・ステイン

（その他のキャスト）
　アルバロ・サンス・ロドリゲス　　アイツィべル・ガルメンディア

　■コピー

欲望は目覚める

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