これは、「シラノ」のピーター・ディンクレイジ主演のロマンティック・コメディ。共演は、アン・ハサウェイにマリサ・トメイ。
　監督は、あのアーサー・ミラーの娘で、ダニエル・デイ＝ルイスのパートナーでもあるレベッカ・ミラー。

　ニューヨーク、ブルックリン。現代オペラ作曲家のスティーブンは、スランプに陥り、鬱状態で作曲に手がつかないでいた。そんなある日、妻で精神科医であるパトリシアから「気分転換に」と、愛犬と散歩に送り出されたスティーブンは、バーでタグボート船長のカトリーナと出会う。
　誘われて彼女の船に乗り込んだスティーブンは、カトリーナに強引に迫られ、ベッドを共にする事になってしまい――そこからの帰路、突如、創作のインスピレーションがスティーブンに舞い降りるのだった。
　そして、その出会いが、スティーブンと、周囲の人々の人生を劇的に変えて行くことになるのだった……

　この映画、原題は「She come to me」で、直訳すれば「彼女が来た」……これだって、何のことやら判らないけれど、まだ邦題よりましな気がします――これは、ある出会いが運命を変える物語なのです。

　映画としては、スクリューボールコメディの類で、主人公を巡る三角関係のドタバタに周囲が巻き込まれて……と言うものなのですが、そこはさすがレベッカ・ミラー。トランプ政権以降の現代アメリカに蔓延る、復古主義的な保守派の台頭、悪しき男らしさの発露、と言う問題に、虐げられる女性や子供、それに有色人種やブルーカラー労働者と言う弱者が手を取り合って、保守的な白人男性に一杯食わせるのがクライマックスとなるのです。
　これは全く予想外の展開で、最早スクリューボールどころか大暴投ではないか、と思ったりもしたけれど、それでも収まるところに収まって大団円を迎えたのは見事と言う他はありません
。
　これは面白い映画でした。　
　

　（２０２４年　４月　６日　川崎チネチッタにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

レベッカ・ミラー

　■出演

スティーブン　・・・　ピーター・ディンクレイジ

パトリシア　・・・　アン・ハサウェイ

カトリーナ　・・・　マリサ・トメイ

（その他のキャスト）
　ヨアンナ・クーリグ　　ブライアン・ダーシー・ジェームズ

　■コピー

愛が、突然、降って来た。

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