白鍵と
黒鍵　
の間に

　これは、「素敵なダイナマイトスキャンダル」の冨永昌敬監督がジャズピアニストで文筆家の南博による回想録「白鍵と黒鍵の間に -ジャズピアニスト・エレジー銀座編-」を映画化したもの。
　主演は池松壮亮。サックス奏者の松丸契や歌手のクリスタル・ケイも出演し、演奏シーンに彩りを添えています。

　昭和６３年、暮れ。銀座のキャバレーでピアノを弾いていたジャズピアニスト志望の博は、ふらりと現れた謎の男のリクエストで「ゴッドファーザー 愛のテーマ」を演奏する。しかしその曲をリクエストしていいのは銀座界隈を牛耳る熊野会長だけ、そして演奏を許されているのは会長お気に入りの敏腕ピアニスト・南だけという不文律があった。
　博は店を追われ、居場所を求めて銀座の街に出て――そして、現実と幻想の間を駆け抜ける狂騒の一夜が始まる……
　
　この映画、銀座のキャバレーを舞台に、ジャズピアニストを目指して銀座に来た青年の南博と、夢の実現のために銀座から出て行こうとするバンドマンの南博と、銀座のビル裏から抜け出せなくなって彷徨う浮浪者の南博……それぞれ、違う時代を生きる南博、その人生のターニングポイントとなった一夜を、同じ日に重ねて描く物語……さっぱり判らない？その通りだと思います。
　そんな映画は、ジャズの即興演奏を映画で再現したものなのではないか？と思いました――ピアニストの半生、その転機となった一夜、それを即興演奏で、あっちに飛び、こっちに寄り道しながら、心の思うままに語って行く……同じ旋律をアレンジを変えつつ変奏する音楽と、時空を自在にコントロールする映画の“魔法”が生み出した「ノンシャラント」（無頓着、投げやり）な作品だ、と――これは、そんな事を思わせる怪作です。　
　

　（２０２３年　１０月　６日　１０９シネマズ港北にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

冨永昌敬

　■出演

南博　・・・　池松壮亮

（その他のキャスト）
　仲里依紗　　森田剛　　クリスタル・ケイ　　松丸契　　川瀬陽太　　杉山ひこひこ　　中山来未　　福津健創　　日高ボブ美
　佐野史郎　　洞口依子　　松尾貴史　　高橋和也

　■コピー

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