ウィ，シェフ！

　これは、実在のシェフ、カトリーヌ・グロージャンをモデルにしたヒューマンドラマ。
　出演は、「シティーハンター　THE MOVIE　史上最香のミッション」のオドレイ・ラミー、「最強のふたり」のフランソワ・クリュゼ。監督は、「社会の片隅で」のルイ＝ジュリアン・プティ。

　ＴＶで活躍する人気シェフのレストランで、スーシェフとして働いていたカティ。だが、自分のレシピを変えるよう指示された事で、オーナーシェフと衝突して店を飛び出してしまう。
　しかし、有名シェフとケンカしたカティを雇うレストランはなく、女優志望の友人が人づてにようやく見つけた職場は、移民の少年たちが暮らす自立支援施設だった。
　まともな食材も器材もなく、話が違うと食ってかかるカティに、施設長のロレンゾは、少年たちを調理アシスタントにすることを提案して……

　まず、この映画、宣伝では「コメディ」とされていますが、そこまで笑える映画とは思えません。内容としても、料理よりも移民問題の方が重い感じがあり、社会派的な要素も多分に持つヒューマンドラマ、と言う感じです。
　移民の少年に料理を教える事で、フランス文化を教え、社会に馴染ませるのだ、と言うカティの狙いは、フランス料理を文化と位置づけるフランスならでは、と言う所でしょうか――その一方で気になったのは、カティが「厨房では、性別や宗教は関係ない」と言うのですが、イスラム教徒は豚を食わず、ユダヤ教徒はハラル認証のあるものしか食べません。そうした事から、料理に宗教は大きく関係があると思うのですが……

　物語のクライマックスは、ＴＶ番組でのサプライズ移民問題アピール……この辺りを含め、終盤の展開はいささか迷走気味で、正直、まとまりとしては今ひとつ。残念に感じる部分もありましたが、それもまぁ、エンターテイメントとして、ではなく、社会派ヒューマンドラマと見れば及第点。
　エピローグで、決して綺麗事では収まらない、シビアな現実を見せるのも、真摯さを感じさせて好印象でした。
　

　（２０２３年　５月　６日　新宿ピカデリーにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

ルイ＝ジュリアン・プティ　

　■出演

　カティ・マリー　・・・　オドレイ・ラミー
　
　ロレンゾ・カルディ　・・・　フランソワ・クリュゼ

（その他のキャスト）
　シャンタル・ヌーヴィル　　ファトゥ・キャバ　　ヤニック・カロンボ　　アマドゥ・バー　　ママドゥ・コイタ　　アルファ・バリー
　ヤダフ・アウェル　　ブバカール・バルデ

　■コピー

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