ベネデッタ
ＢＥＮＥＤＥＴＴＡ

　これは、歴史上初の女性同性愛裁判記録を原案に、ポール・ヴァーホーベンが放つセクシュアル・サスペンス。
　出演は「シンク・オア・スイム」のヴァージニー・エフィラ、「ファイブ・デビルズ」のダフネ・パタキア、「ともしび」のシャーロット・ランプリング。

　１７世紀イタリア。幼い頃から聖母マリアと対話し奇蹟を起こす少女とされていたベネデッタは、６歳の時に修道院に預けられた。１８年後、純粋無垢なまま成人したベネデッタは、ある日、家族の虐待から逃れるため修道院に逃げ込んできた若い女性バルトロメアを助ける。
　様々な心情が絡み合い、２人は秘密の関係を深めて行く。
　そんなある日、ベネデッタが聖痕を受け、神に選ばれた聖女として新たに修道院長に就任、教会内で権勢を揮うようになる。そんな彼女への反発、更に、彼女の行いに疑惑の目を向けていた元院長シスター・フェリシタは、ベネデッタを密かに調べ……

　この映画ですが、まずは、ヴァーホーベンもいい感じに枯れたなぁ、と思ってしまいました。
　勿論、かなりエロいし、暴力的なエグいシーンも多いのですが、宗教のドグマに触れる部分では、描写を抑えて、観客によりどちらとでも解釈出来るようになっていて、宗教、そして愛について考えさせられるものとなっています――まぁ、それでも、聖母像を加工してディルドーとし修道院内で同性愛に耽るとか、教皇まで巻き込んだ教会内での権勢争いなど、やはり行き過ぎた部分があり、一部のキリスト教圏国では、上映禁止となってしまったのですが……
　主演のヴァージニー・エフィラは、本作の正にドグマである、聖女と悪女の両特性を兼ね備え、見方によっては全く異なる表情を見せるベネデッタと言う女性像を、巧みに、そして魅力的に演じています。
　そんなベネデッタに当初から懸念を抱く、シスター・フェリシタを演じるシャーロット・ランプリングもいい存在感を出しています。惜しかったのは、バルトロメアを演じたダフネ・パタキアで、彼女を純粋無垢な存在に振った方が、ベネデッタの両面性が引き立つように思うのですが……

　最後も史実に上手く収斂させた感じで、かつてのヴァーホーベンと比べると物足りなさを感じたりもしましたが、これは面白い映画でした。　
　

　（２０２３年　２月２２日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

ポール・ヴァーホーベン

　■出演

ベネデッタ　・・・　ヴィルジニー・エフィラ

バルトロメア　・・・　ダフネ・パタキア

シスター・フェリシタ　・・・　シャーロット・ランプリング

（その他のキャスト）
　ランベール・ウィルソン　　オリヴィエ・ラブルダン　　ルイーズ・シュヴィロット　　エルヴェ・ピエール　　クロチルド・クロー

　■コピー

わたしは　告白する

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