ＢＬＵＥ ＧＩＡＮＴ

　これは、ジャズを題材にした石塚真一の人気コミックを、「名探偵コナン　ゼロの執行人」の立川譲監督が、アニメ映画化したもの。
　声の出演には「夜、鳥たちが啼く」の山田裕貴の他、間宮祥太朗、岡山天音ら、実写映画で活躍する俳優が顔を揃えています。

　世界一のジャズプレーヤーを目指してテナーサックスに打ち込む宮本大は、高校卒業を機に上京。高校の同級生・玉田俊二のアパートに転がり込んだ。
　やがて、凄腕ピアニストの沢辺雪祈と出会った大は、ドラムを始めた玉田俊二とジャズバンド“ＪＡＳＳ”を結成。
　楽譜も読めず、ジャズの知識もなしに、ひたすらサックスを吹いてきた大。幼い頃からジャズに全てを捧げてきた雪祈。初心者の玉田。そんなトリオの目標は、日本最高のジャズクラブ「Ｓｏ　Ｂｌｕｅ」に出演すること――
　
　原作は未読ですが、この映画、原作ファンにも評判は悪くないようです。それは、コミックでは表現出来ない「音」を作品に盛り込み、絵の力と合わせて原作よりも踏み込んだ物語世界を描いているからではないでしょうか。
　その音楽は、主人公である大のサックスを馬場智章、凄腕ピアニストの雪祈のピアノを上原ひろみ、玉田のドラムを石若駿と言う実力あるプレイヤーの演奏で再現しています……ただ、本作の音楽監督は、ピアニストの上原ひろみであるせいか、映画の中では雪祈のピアノが目立って描かれているように思えましたし、中盤以降は、大と言う“天才”と向き合って、己の才能に向き合わざるを得なくなった雪祈の物語になっているようにさえ感じられました。

　そして、これは、そんな本格的な音楽映画である一方で、正当派の青春映画でもあります。
　しかし、今の自分には、その熱量が羨ましくもあり、そして、虚しさも感じさせるものでした――がむしゃらに、何者かになろうと努力する、その熱意は、自分にはもう失われてしまったんだな、と身につまされる熱量と輝き……そんなエネルギーを感じる、熱い青春映画でした。　
　

　（２０２３年　２月１９日　川崎チネチッタにて）

（作品データ）

　■監督

立川譲

　■出演

宮本大　　 ・・・　山田裕貴
沢辺雪祈　・・・　間宮祥太朗
玉田俊二　・・・　岡山天音

　■コピー

二度とないこの瞬間を
全力で鳴らせ

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