銀河英雄伝説
〜わが征くは星の大海〜

　これは、未来の銀河系を舞台に、帝国と同盟国、政治体制の異なる２つ国家の戦いと、２人の若き名将の活躍を描く田中芳樹の同題小説を、アニメーション映画としたもの。
　監督は、「超時空要塞マクロス　愛・おぼえていますか」の石黒昇。
　今回、原作小説刊行４０周年を記念して、４Ｋリマスター版が公開されました。

　はるか未来、人類は銀河系へと進出……やがて銀河帝国という専制君主国家と、自由惑星同盟という民主主義国家に分裂し、果てしない戦争を続けていた。
　宇宙歴７９５年、銀河帝国軍大将ラインハルト・フォン・ミューゼルは、同盟軍の進攻に備え、艦隊を率いて前線のイゼルローン要塞に派遣される。
　一方、イゼルローン要塞攻略の為、進出した同盟軍艦隊の中に、“エル・ファシルの英雄”として知られるヤン・ウェンリー准将の姿があった……

　本作は、「銀河英雄伝説」本編の前日譚となるエピソード。小説としては、外伝として本編の後に刊行されたものですが、アニメシリーズでは、ＯＶＡ作品に先行して製作され、１９８８年に劇場公開されました。
　本作を劇場のスクリーンで観るのは初めてになるのですが、やはり古いアニメと言う事で、４Ｋリマスターされたとは言え、今となっては絵は粗いし、現在のアニメでは当然のように用いられるＣＧが皆無で、映像表現としても物足りなくも感じます。
　しかしながら、描こうとするものは、そうした拙い映像技術のハンデを吹き飛ばす素晴らしいもの。
　クライマックスとなる、ボレロの調べに乗せて、帝国と同盟国の艦隊戦を描くのが印象的なのは確かですが、自分としては印象的なのは、イゼルローン要塞への入港シーン。液体金属で出来た要塞表面に艦影が反射する幻想的とも言えるビジュアルを、音楽の調べに乗せ、まるでバレエの１シーンのように見せる、そのセンスは素晴らしいものがあります。
　
　また、その後、再三、アニメシリーズが作られる事となった本シリーズのビジュアルイメージをほぼ固めてしまった本作のインパクトは大きく、正にエポックメイキングな１本だと思います。　
　

　（２０２３年　１月　５日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

石黒昇

　■出演

ラインハルト・フォン・ミューゼル　・・・　堀川亮

ヤン・ウェンリー　・・・　富山敬

（その他のキャスト）
　広中雅志　　森功至　　若本紀昭　　戸谷公次　　石丸博也　　塩沢兼人　　二又一成　　柴田秀勝
　井上和彦　　徳丸完　　大木民夫　　政宗一成　　大林隆介　　古川登志夫　　鈴置洋孝　　石塚運昇
　屋良有作

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