アバター
ウェイ・オブ・ウォーター

　これは、３Ｄ映像技術により未だかつて観た事のない世界を創造、全世界歴代興行収入記録を塗り替えたジェームズ・キャメロン監督によるSF大作「アバター」の続編。
　主演には、サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナが続投。シガーニー・ウィーバーも、驚きの役で引き続き出演しています。

　アバター技術により、地球から遠く離れた星、パンドラの先住民ナヴィの一員となったジェイクは、森に棲まうナヴィの族長の娘、ネイティリと結ばれ、子供たちと平和に暮らしていた。
　しかし、再び人類がパンドラに現れ、神聖な森を焼き、新たな拠点を築き始める。それに抵抗するジェイクだったが、人類は、戦死したクオリッチ大佐以下、海兵隊員らのコピー・アバター部隊を投入し、ジェイクをターゲットに攻勢ををかけてきた。
　そして、子供たちに危機が迫る至り、ジェイクは苦悩の末に、森と部族を捨て、家族と共に、海の部族の元に身を寄せることにするが……

　３０００時間を超えるダイビング経験があり、海と潜水に並々ならぬ思い入れのあるジェームズ・キャメロンですが、前作「アバター」では海中世界は描かれませんでした。これは、映像技術がそこまで至らなかった、と言う事なのですが、本作では、その鬱憤を晴らすかのように、パンドラの海がこれでもか、と描かれています。
　俳優も、トレーニングを受けて、水中でのモーションキャプチャー演技を敢行、最新の映像技術により、とんでもなくリアルで、しかも全てが創作された海中世界を作り上げています。
　これは全く素晴らしい出来て、これには引き込まれました――自分が装着していたスマートウォッチは映画鑑賞中１時間以上仮眠状態にあり、１０分は熟睡していた、と判定……それだけ、身じろぎもせず、ただただ映像に呑まれていた、と言う事でしょう。
　映像の進歩は水の描写だけでなく、全体的にもレベルアップしています。
　先日、リバイバル上映で同じスクリーンで「アバター」を観ているのですが、それと比べて、ちらつきや違和感がなく、極めて自然に見えるようになっているのには感嘆するしかありません。

　キャストは、前作からの続投ですが、シガニー・ウィーバー演じるのは、前作で演じたグレース博士のアバターから生まれた娘、と言う設定のキリで、何と１４歳の少女役……これがシガニー・ウィーバーなんだよなぁ、と思うと複雑です。

　ただ、設定や映像は素晴らしいのですが、物語が弱いのはやはりジェームズ・キャメロン――この辺り、宮崎駿に通じる部分です。
　前の「アバター」も、「ダンス・ウィズ・ウルブス」の焼き直しじゃないか、と言う評がありましたが、それでもアバター技術と言うＳＦガジェット、障碍者の社会復帰、環境保護と開発、更に菌類ネットワークにより惑星の生態系全体が有機コンピューターと進化したパンドラ、と言う壮大なＳＦ設定、などなど……様々な要素を盛り込んでいたのに対し、本作は、家族、そして親子の物語になっているのです。素直で出来のよい長男と、反抗的な次男と言う設定と言い、その次男坊が、親にも社会にも理解されない、とふて腐れる所と言い、青春もの映画で、ありがちなもの。更に、この「アバター」シリーズは全５部作となる構想とのことで、ジェイクの養女のキリの不思議な能力と生まれの謎は、次作に持ち越しになる、と言う事で、３時間も観せられながらも、最後は「続く」と出そうなエンディグを迎えた事も、物語に物足りなさを覚えた要因です。

　しかしながら、これは正に圧倒される映像体験。
　３時間１６分を全く退屈せず、まだこの世界をもっと観たい、と思わせる辺りはさすが、と言うしかありません。今はただ、続きを早く観たい、と言う思いです。
　
　

　（２０２２年　１２月１８日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督・脚本・原案

ジェームズ・キャメロン

　■出演

ジェイク・サリー　・・・　サム・ワーシントン
ネイティリ　・・・　ゾーイ・サルダナ

キリ　・・・　シガーニー・ウィーバー

クオリッチ大佐　・・・　スティーブン・ラング

（その他のキャスト）
　クリフ・カーティス　　ジョエル・デヴィッド・ムーア　　ＣＣＨ・パウンダー　　イーディ・ファルコ　　ジェマイン・クレメント　　ケイト・ウィンスレット

　■コピー

奪われるのは、
目か、心か。

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