そばかす

　これは、等身大の女性のリアルをつむぐ映画シリーズ「（ノット・）ヒロイン・ムービーズ」で、第１弾「わたし達はおとな」、第２弾「よだかの片思い」に続く、第３弾。
　「恋愛至上主義」が常識化した社会で、他人に恋愛感情を抱かないアセクシャルの女性が、「自分は何者なのか」を見出していく姿を描くヒューマンドラマになります。
　監督は、劇団「玉田企画」の玉田真也。主演は、「ドライブ・マイ・カー」の三浦透子。

　蘇畑佳純は３０歳。大学では音楽の道を志すも挫折し、現在は地元に戻り、コールセンターで働いている。
　妹は既に結婚し、母から頻繁に「結婚しなさい」とプレッシャーをかけられ、ついには無断でお見合いをセッティングされてしまう。しかし、そのお見合いの席で、佳純は結婚よりも友達付き合いを望む男性と出会って……

　佳純を演じる三浦透子は、これが映画初主演なのだそうです。本作では、共演が元ＡＫＢ４８の前田敦子に元乃木坂４６の伊藤万理華なので、並ぶと顔は大きいし、体型も太めに感じますが、さすがに、元トップアイドルとの比較じゃ相手が悪いとしか……ただ、あまり女性らしさ、と言うか性的魅力を出して来ない辺りが、佳純のアセクシャルと言う特性にはあっているように感じました。

　最近の映画では、ＬＧＢＴＱと言うセクシャルマイノリティを登場させるのは珍しくありませんが、本作が注目したのは、アセクシャルと言う、そもそも性的欲望も恋愛感情も持たない存在……これを選んだ着眼点はよく、そのアセクシャル特有の「誰からも理解して貰えない」と言う孤独感を、映画は丁寧に語ろうとし、三浦透子もよくそれを表現している、と思います。孤独故に、そんな自分を理解して貰える事を望むと共に、それに臆病になってしまう、と言う語り口もいい。

　気になったのは、そうしたマイノリティに対する丁寧な描写の一方で、マジョリティの描写や、物語設定が類型的で、ありきたりに思える事……最後に主人公を走らせて終わるのも日本映画にはよくあるとは言え、これも正に類型的なものだと思います。　
　

　（２０２２年　１２月１６日　イオンシネマ港北ＮＴにて）

（作品データ）

　■監督

玉田真也

　■出演

蘇畑佳純　・・・　三浦透子

篠原睦美　・・・　伊藤万理華
蘇畑菜摘　・・・　坂井真紀

世永真帆　・・・　前田敦子

（その他のキャスト）
　伊島空　　前原滉　　前原瑞樹　　浅野千鶴　　田島令子　　三宅弘城　　北村匠海

　■コピー

今までを全部抱きしめて。
　　　　　　　　進め、自分。

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