ハッピー
ニューイヤー

　これは、「猟奇的な彼女」などの恋愛映画の名手クァク・ジェヨン監督が、韓国の豪華スターと共に贈るロマンティック・ラブストーリー。

　クリスマスを迎える準備に忙しい高級ホテル「エムロス」で、マネージャーを務めるソジンは、15年間も親しくしていた男友達のスンヒョが結婚する、と知らされモヤモヤしている。
　そんなソジンの弟で、高校生のセジクは連んでいる友人らが、学校のマドンナへ、愛の告白をすると言う騒動に巻き込まれた。
　「エムロス」の若きCEOのヨンジンは自宅ボイラーが壊れてホテル暮らし。その部屋係のイヨンは、ミュージカル女優を夢見ているものの、認められずにいる。
　公務員試験に落ち続け、恋人にも振られた人生どん底のジョエンは大晦日に自殺する前の贅沢として、「エムロス」に部屋をとった。
　人気歌手のイ・ガンをマネジメントするサンフンは、大手芸能事務所によるイ・ガンの引き抜きに悩んでいた――そんな彼らはゴタゴタ・ドタバタする年末を乗り越え、“ハッピー”な新年を迎えられるのか？

　この映画、クァク・ジェヨン監督が手掛ける、初めての群像劇だそうですが、これが豪華ホテルを舞台とした、正に”グランド・ホテル形式”と言うベタな構成。物語の方も、主となるのが友情と愛情の間で揺れる女心で、それに社会に引き裂かれたかつての恋、少年の初恋、身分違いのシンデレラ・ストーリー（これがまた落とし物から始まると言うベタなもの）……と、幅広い年代の７組の男女１４人が織りなす、様々な恋と友情の物語。

　みなが落ち着く所に落ち着いて、ハッピーエンドを迎える予定調和な物語に１３８分はいささか長いのではないか、と思いましたが、そこはクァク・ジェヨン、人物配置に隙がなく、何処かでみんな繋がっていると言う設定も巧みなら、冒頭はドタバタ喜劇調で観客の心を掴み、登場人物を印象付けたら、後半で感情を揺さぶりにかかる韓国映画ならではのこれまたベタな展開を、手際よく見せるのには唸らされます。
　ただ、強いて言えば、歌手のイ・ガンの移籍話と、ソジンの弟、セジクの告白は、ホテルの外のエピソードでもあり、これらは切れるのではないか、と思うのですが――それでも、この長さを退屈させず、ダレさせずに見せてしまうのですから、文句のつけようもありません。
　正に、これはお祭り映画。クリスマス、もしくは新年のデートムービーの決定版、と言う所でしょうか。

ＰＳ
　この映画、内容的には正にクリスマスのデートムービーではあるのですが、これが、クリスマス〜年末にかけて上映が終わってしまいそうなタイミングでの公開――２０年前の「猟奇的な彼女」が、クリスマス公開だった事を思うと、現在の日本市場における韓国映画の凋落ぶりを実感する次第です。
　

　（２０２２年　１２月１１日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

クァク・ジェヨン

　■出演

ソジン　　・・・　ハン・ジミン
スンヒョ　・・・　キム・ヨングァン
ヨンジン　・・・　イ・ドンウク
イヨン　　 ・・・　ウォン・ジナ
ジョエン　・・・　カン・ハヌル
サンフン　・・・　イ・グァンス
イ・ガン　・・・　ソ・ガンジュン

（その他のキャスト）
　ユナ（少女時代）　　イ・ジヌク　　イ・ヘヨン　　コ・ソンヒ　　イ・ジヌク　　チョ・ジュニョン　　ウォン・ジアン

　■コピー

だって、それでも、来年こそは運命の恋がしたい！

［戻る］