愛してる！

　これは、３人の個性派監督を迎えた日活ロマンポルノ５０周年記念プロジェクト「ROMAN PORNO NOW（ロマンポルノ・ナウ）」の第２弾
　白石晃士監督・脚本、谷口恒平の共同脚本で贈るコメディタッチのSM物語になります。

　ドキュメンタリーの密着取材中の、元女子プロレスラーで地下アイドルのミサは、ライブハイスで行き過ぎたファンに暴行した事をきっかけに、ＳＭラウンジ“Ｈ”のオーナーから、素質を見込まれ女王様としてスカウトされる。
　困惑するミサだったが、人気女王様・カノンとの出会いで、知らなかった快感に目覚めてしまう。
　それから、ミサは地下アイドル活動と並行して、“Ｈ”で、カノン女王様からのＳＭプレイの手ほどきをうけるのだが……

　これはよかった。
　内容は、ＳＭ女王様との、同性愛的でもあり主従関係でもある、ちょっと捻れた恋物語。同テーマに「夕方のおともだち」がありますが、こちらは登場人物が若い分、物語に勢いが出て来るのと、ＳＭプレイの教科書的なハウツー部分もあって興味深く観る事が出来ました。
　白石晃士監督ならではの、モキュメンタリー手法、ここでは有用に機能しているように思えました。

　ミサ役の川瀬知佐子は、ロマンポルノ女優としては新人で、プレイ中のあえぎ声などの演技が拙いのが気になりますが、これも未知の世界に入るミサの不慣れさ、と見れば許容出来る範囲。
　ただ、カノン女王様役の鳥之海凪紗は、”孤高の存在”としていい雰囲気を出していて、まるで、「響」の平手友梨奈のよう、と言ったらほめ過ぎになるでしょうか？
　この、鳥之海凪紗演じるカノン女王様と、彼女に導かれるＳＭ世界と、自分らしさの解放……そこに、この映画の価値があるように思います。

　また、特筆すべきは“Ｈ”のオーナーを演じたりゅうちぇるで、ほぼ地のままではあるのだけど、いい存在感です。
　あと、高嶋政宏がなんと本人役で出演しているのですが……これが、性癖を恥じる必要などない、と“変態讃歌”をブチ上げる本作において、とする主役を食いそうな勢いでした。　
　

　（２０２０年　１０月　８日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

白石晃士

　■出演

ミサ　・・・　川瀬知佐子

カノン　・・・　鳥之海凪紗

鳥之海凪紗　・・・　本人

（その他のキャスト）
　乙葉あい

　■コピー

一緒に
遠くまで行くよ！

［戻る］