これは、「舞妓Haaaan！！！」「謝罪の王様」に続く、阿部サダヲ主演・水田伸生監督によるヒューマンコメディ。

　小さな市役所で、人知れず亡くなった人を埋葬する“おみおくり係”として働く牧本壮。
　故人に入れ込む余り、周囲とトラブルを起こす事もしばしばだった。
　そんな牧本だが、ある日、孤独死した老人・蕪木が、牧本の自宅のアパートの向かいの棟に住んでいた事を知り、密かなショックを受ける――なぜ、気づく事が出来なったのだろうか……牧本は、せめてもの償いにしっかり弔ってやろう、と奔走するのだが……

　これ、ウベルト・パゾリーニの小説で、映画化もされた「おみおくりの作法」の日本版リメイク。
　元々、生者よりも死者に親しみを覚えていた男を描く、静かな映画を、終盤暴走気味に加速するコメディを得意とする阿部サダヲ＋水田監督のコンビはどうアレンジするのか、と思っていたら、これが意外にも原作そのままの展開を見せました。

　気になったのは、阿部サダヲ演じる牧本が、自閉症など何らかの精神疾患者に見える事と、それをコメディとする事に釈然としないものを覚えてしまいました――しかも、こうした病理を抱える演技となると、阿部サダヲが上手いものだから尚更です。
　あと、蕪木の娘の塔子が、妙に小綺麗な家に住んでいるのも不自然に感じたり……

　また、終盤の展開も、なんとも釈然としないもの……映画「おみおくりの作法」では、生者よりも死者の方を向いていた男がある女性との出会いにより、自分の人生を「生きよう」とした途端に死者に手を引かれるような印象を受けたのですが、本作では、その辺りは曖昧なのです……その癖、死亡フラグだけはしっかり立っており、何とも言えないものとなっていました……まぁ、この辺、オリジナルと比べてしまうからかも知れませんが……
　何れにしても、この物語に対し、騒々しい演出と、勢いで押す展開を得意とする阿部サダヲ＋水田監督のコンビは相性がよくないのでは？と思ってしまいました。
　

　（２０２２年　９月３０日　ＴＯＨＯシネマズ海老名にて）

（作品データ）

　■監督

水田伸生

　■出演

牧本壮　・・・　阿部サダヲ

蕪木孝一郎　・・・　宇崎竜童

津森塔子　・・・　満島ひかり

（その他のキャスト）
　松下洸平　　でんでん　　松尾スズキ　　坪倉由幸(我が家)　　宮沢りえ　　國村隼

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まきもとさん、いい加減にしてください！

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