これは、尾田栄一郎の人気漫画「ワンピース」の劇場映画版で、尾田栄一郎が総合プロデューサーも務める「ＯＮＥ　ＰＩＥＣＥ　ＦＩＬＭ」シリーズの第４弾となります。
　監督は、「コードギアス」シリーズの谷口悟朗。

　素性を隠したまま配信された歌唱パフォーマンスで人気を集め、今や世界中を熱狂させる歌姫・ウタ。彼女が初めて公の前に姿を現すライブが開催されることになり、会場には世界中からファンが押し寄せた。
　その中に、ルフィ率いる麦わらの一味たちもいた。会場に姿を見せたウタにルフィは駆け寄り、彼女が大海賊・四皇のシャンクスの娘である事を明かしてしまう。
　にわかに色めき立つ海賊や海軍が注目する中で、ライブは盛り上がりを見せるが、その裏では恐ろしい計画が進んでいた……

　「ワンピース」については原作未読。劇場版も１〜２本を観たくらいで、実は作品世界もよく判っていません。そんな状態ではあるけれど、今回、記録的な興行成績を上げている、と言う事で劇場に足を運んでみました。
　そんな状態ではありながら、今回は、ゲストキャラクターのウタを巡るサイドストーリーと言う事で、映画はなかなか楽しめました。
　ただ、現実と、ウタの作り出した夢の中の世界、と言う舞台設定が判り辛い上に、海賊行為と言う組織犯罪の否定、と言う物語を骨幹を揺るがすような内容を入れて来たかと思えば、人気の歌手が、ファンの期待に応えると言うプレッシャーそのものや、逃避としての薬物によって壊されて行く、と言うありがちだけどシリアスな展開を盛り込むなど、話としては重く感じます。その一方で、原作漫画からの定番ギャグに、漫画チックな展開などがどうにも噛み合わせが悪く感じられました。

　ウタの歌唱シーンは、Ａｄｏが担当（台詞は別の声優）していますが、素性を隠したままで配信で人気となった歌姫、とは正にＡｄｏそのままではないか、と思ってしまったり……また、代表曲の「うっせぇわ」もそうだと思うのですが、攻撃的だったり、ダークな雰囲気の歌も歌うＡｄｏは、中盤で闇落ちするウタにはハマっています。
　そんなウタ＝Ａｄｏの歌は、今回６曲が用意されており、ある意味、これはＡｄｏの覆面・劇場コンサートとも言えるもの――それが「ワンピース」でやる事か、と言う批判もあるようですが、元々が番外編の劇場版なのですから、これはこれでありだろう、と思います。

　終盤は、敵味方、多くのキャラが入り乱れる乱戦となり、その中で、敵が強大化する事で、破壊のスペクタクルも加速度的にスケールアップして行く……と言うのは、少年ジャンプの漫画としては定番の展開。
　最後の風呂敷の畳み方が、かなり強引のように思えたが、まぁ、これも漫画なのだから仕方ない、と言う所でしょうか。
　なるほど、これは人気となるのも判る、と言う内容でした。　
　

　（２０２２年　８月１１日　イオンシネマ座間にて）

（作品データ）

　■監督

谷口悟朗

　■出演

ルフィ　・・・　田中真弓

ウタ　・・・　（声）　名塚佳織
　　　　　　 （歌）　Ａｄｏ

シャンクス　・・・　池田秀一

（その他のキャスト）
　中井和哉　　岡村明美　　山口勝平　　平田広明　　大谷育江　　山口由里子　　矢尾一樹　　チョー　　宝亀克寿
　山田裕貴　　粗品　　せいや　　新津ちせ

　■コピー

赤紙が導く “終焉<フィナーレ>”

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