Ｌ．Ａ．コールドケース

　これは、ランドール・サリヴァンのノンフィクションを元に、ジョニー・デップとフォレスト・ウィティカーのＷ主演で描くクライム・サスペンス。
　監督は、「リンカーン弁護士」のブラッド・ファーマン。

　ロサンゼルス市警の元刑事ラッセル・プールは、警察を辞職後も１９９７年に起きた未解決事件……伝説的ラッパー、２パックとノトーリアス・Ｂ．Ｉ．Ｇの殺人事件を追っていた。だが、事件から１８年経っても、犯人は特定されず、ロス市警は捜査を継続している。
　一方、事件の回想録を担当する事になったジャーナリスト、ジャック・ジャクソンは、なぜラッセルがこの事件に執着しているのか、ラッセルへの直撃取材を試みて……

　この映画ですが、驚くべき事に、描かれている事件内容は事実に忠実なのだそうです――現在も続く、白人警官による黒人への不当な暴力……それが、黒人ギャングに黒人警官を抱き込み味方につけさせる、と言う決断をさせたのでしょうか？
　黒人警官がギャングと癒着し、ノトーリアス・Ｂ．Ｉ．Ｇ殺人事件にも警官が関与していた……スキャンダルの露呈、それに加えトップラッパーであったノトーリアス・Ｂ．Ｉ．Ｇ遺族からの莫大な賠償請求訴訟を恐れ、ロス市警は事件を闇に葬る事にした――と言う内容には、事件を追っていたラッセル・プールの推測が混じるとは言え、納得させるものがあります。
　しかも、２００２年に原案となるノンフィクションが刊行されて映画化の話が立ち上がったものの、ロス市警の妨害があって映画化が進まなかった、と言う話まであるとなれば尚更の事です。

　クライム・サスペンスとしての演出は手堅く、ジョニー・デップも持ち味のエキセントリックさを抑えた演技に終始しているのは好印象。非常に見応えのある内容ですが、盛り込まれた要素と情報量は非常に多く、時間軸を行き来する構成もあって、ラップに乗せてテンポよく進む物語を追うのは大変……ちょっと気を抜くと振り落とされるような感じもあります。
　そして、権力の側にいる者が、己の責務を果たさず、真実を明かさないと言う怖さ……黒塗りにされた捜査書類に、現在の日本に通じるものを見せられた感じです。
　

　（２０２２年　８月　７日　Ｋｉｎｏシネマ横浜みなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督

ブラッド・ファーマン　

　■出演

　ラッセル・プール　・・・　ジョニー・デップ

　ジャック・ジャクソン　・・・　フォレスト・ウィテカー

（その他のキャスト）
　トビー・ハス　　デイトン・キャリー

　■コピー

それは、誰も望まない<真実>
　

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