ＢＡＤＭＡＮ
バッドマン
史上最低のスーパーヒーロー

　これは、フランスで作られた実写版「シティ・ハンター　THE MOVIE 史上最香のミッション」の主役兼監督のフィリップ・ラショーと、彼のチームが再集結して作り上げたアメコミパロディ。
　共演は、フィリップ・ラショー組のお馴染みの面々に加え、「ベティブルー」のジャン＝ユーグ・アングラード。
　今年２月、コロナ禍のフランスで公開され、Ｎｏ．１ヒットとなったと言います。

　警察署長の父親の反対を押し切り、役者として夢を追い続けているセドリックが、やっと掴んだスターへの切符。それは、ヒーロー映画「バッドマン」の主役と言う大役だった。
　セドリックは体を鍛え上げ、武術を学んで撮影に臨むが、撮影の初日、父親が倒れたという知らせが入る。焦ったセドリックは、衣装のバッドスーツのままバッドモービルに乗り病院へと急ぐが、その途中で事故に遭い気絶してしまう。
　そして目を覚ますと、自分の名前や過去の記憶を失っていた――そして、セドリックは、自身をスーパーヒーローだと思い込んで……

　フランス版「シティ・ハンター」は未見。フィリップ・ラショーについて、予備知識なしに観始めたのですが、それでも楽しめる、面白い映画になっていました。
　主役はバットマンならぬバッドマンですが、ネタとしてはＤＣにこだわらず、アメコミ全般、スパイダーマンもネタにされてるし、クライマックスで「アベンジャーズ」になるのには思わず大笑い――こりゃ最高です。

　記憶障害とスーパーヒーロー映画の合わせ技で、自身をヒーローだと思い込んでしまったと言うシチュエイションを、勘違いと偶然の積み重ねで“本物”に転じて行く展開は、コメディとして面白いのは勿論、そこに、思い残しのある失恋ロマンスと、父子の確執と言うドラマをも重ねて行く物語は思いの外巧妙です。
　ギャグは基本的にゆるくてベタですし、眼鏡姿で登場した地味目のヒロインが、眼鏡を取るとセクシーな美女に変わって行くなど、何時の時代だ？と思わせる展開の古さもありますが、それも芸のうちでしょう。
　小ネタの連続で、笑いが途切れる事のない、思いっきり割り切った娯楽作で、これはなかなか。
　今更ながら「シティ・ハンター　THE MOVIE 史上最香のミッション」も観たくなりました
　

　（２０２２年　７月１８日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督・脚本・製作

フィリップ・ラショー　

　■出演

セドリック／バッドマン　　・・・　フィリップ・ラショー

（その他のキャスト）
　ジュリアン・アルッティ　　エロディー・フォンタン　　ジャン＝ユーグ・アングラード

　■コピー

ハリウッドよ、これがヒーローだ？！

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