ミスティック・リバー

　火曜日の午後は、仕事で外出。その日は直帰だったので、帰りにみなとみらいで映画を観る事に。
　映画は「ミスティック・リバー」。
　今年度アカデミー賞の作品賞有力候補とされる、クリント・イーストウッド監督の力作です。

　そうした意味では注目を集める映画ですし、みなとみらいはさすがにつきみ野とは客の入りが違う。(^^;
　平日と言うのに、かなりの席が埋まっていました。

　物語の舞台はボストンの下町、イーストバッキンガム。
　ジミー、ショーン、デイブの３人はこの街で育った。
　だが、彼らが１１歳の時に起きた忌まわしい事件が彼らを疎遠にしていた。
　それから２５年。今は雑貨屋を営むジミーの娘が何者かに殺される事件が発生。事件を担当したのは、刑事となっているショーン。
　やがて、捜査線上に浮かび上がって来たのは、デイブだった・・・

　なるほど、これはよく出来た映画です。
　物語としてはミステリーなんだけど、これが単なる犯人探しや謎解きだけに終わらず、運命のいたずらに翻弄される人たちを映し出す事で、人間の弱さと、したたかさを描き出す、一級の人間ドラマになっています。
　そうした重厚なドラマを演じる俳優陣も、主演のショーン・ペン他、ティム・ロビンス、ケビン・ベーコン、マーシア・ゲイ・ハーデン、ローラ・リニーと、芸達者を揃え、充実した演技を見せてくれます。
　（アカデミー賞の主演男優／助演男優／助演女優賞にもノミネートされています）
　
　派手好きなアメリカ映画にも関わらず、アクションやスペクタクルに走らず、犯罪を描く映画なのに、死体や流血のシーンも最小限。
　音楽もいたずらに華美になることなく、小道具の使い方、伏線の張り方も巧妙と言っていい。
　まぁ、２、３おかしな所もありましたが、ささいな問題と言っていいでしょう。
　（とは言え、真犯人発見の糸口は、あんまりと言えばあんまりですが(^^;)
　正に、「これが映画ってもんだ」、と言う、映画作りのお手本にしたいような作品です。

　ただ・・・問題は、本当によく出来た映画なんだけど、この映画で、私は深い感動を得ることは出来ませんでした。
　確かに、そこにあるのは奥深い人間ドラマであり、それは実力派俳優の力演によって、正に「血の通った」ものとして形になっています。
　だけど、この映画は、それを妙に冷めた視線で見ているように思うのです。
　あたかも、血の通った人間を、「モデル」としか見ようとしない画家のような・・・結果として、この映画から、私は、なんだか宗教画のような印象を受けました。
　その描写力、完成度に文句の言い様はありませんが・・・それは、「神」の視線から見たものではないか、と。
　それが、映画のあまりの完成度が感じさせた錯覚であればいいのですが・・・

　（１月２７日　ＷＭＣみなとみらいにて）

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