この日々が凪いだら

　これは、映画と音楽の掛け合わせにより新たな映画制作企画を具現化するプロジェクト「ＭＯＯＳＩＣ　ＬＡＢ」にて、２０１９年、「ゆうなぎ」のタイトルで公開された青春群像劇。弱冠２１歳、前作「なみぎわ」が数々の映画祭に入選して注目を集めた常間地裕が、人気ロックバンドの羊文学を迎えて制作した、長編デビュー作になります。

　故郷に背を向けて上京、建設会社で現場作業員として働く宮嶋大翔は、花屋で働く望月双葉と出会い、いつしか共に暮らすようになる。
　時代は平成から令和へと変わったが、大翔と双葉の日々は穏やかに流れ、変わらず続いていくように思えた。ところが、東京五輪開催に向けた区画整理で、住いのアパートの取り壊しが決まり、ふたりの生活は変化を余儀なくされて……

　これは令和と言う時代を生きる若者たちの”現在”を描く物語――とは言え、惰性で同棲しているようなふたり、そして、学生気分の抜けない会社員と言う登場人物が、翻弄されるようなドラマのうねりがある訳ではありません。そんな日々を過ごす若者らの思う「凪」とは？と疑問を覚えましたが……激動の昭和も遠い、平成生まれの若者にとっては、この惰性に流される日々こそが、逃げ場のない激流に感じられると言う事なのでしょうか……？

　殊更にエピソードを盛らず、細やかな日々の積み重ねが変化を生んで行く物語には、確かに最近の青春映画とは一線を画したリアリズムがあります。
　その一方で、大きなうねりを生む物語背景のリアリティの欠如、ありがちな展開は、まだ若い監督の経験不足によるものか……
　いずれにせよ、安易にドラマを作らず、大騒ぎもせず、扇情的にも感情的にもならない等身大の映画には好感が持てます。常間地裕監督の今後に期待したい所です。　
　

　（２０２２年　３月１６日　Ｋｉｎｏシネマみなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

常間地裕

　■出演

宮嶋大翔　・・・　サトウヒロキ

望月双葉　・・・　瀬戸かほ

（その他のキャスト）
　山田将　　小田篤　　五頭岳夫　　山之内すず　　田中爽一郎　　星能豊　　重松りさ　　松本高士　　綾乃彩　　塩塚モエカ(羊文学)　　池田萌子　　堀井綾香　　遠藤雄斗　　牛丸亮　　山岡竜弘
　山下ケイジ　　石本径代　　藤原季節　　川瀬陽太　　山形匠

　■コピー

何にもないような明日を、
　　　　待っているだけの――。

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