これは、２０１６年に公開され、第２８回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門で作品賞を受賞した犯罪ドラマ。　
　監督・脚本・編集は、本作が長編デビューとなる小路紘史。出演は、「３５歳の童貞男」のカトウシンスケと、「はやぶさ　遥かなる帰還」の毎熊克哉。

　ケンとカズは、自動車修理工場を隠れみのとしながら覚醒剤の売買で金を稼いでいた。
　恋人と同棲中のケンは真っ当な人生を願うようになるが、一方、カズは商売を大きくする為、元締めのヤクザに黙って、対立組織から格安のブツを仕入れて扱う、と言う危険な行動に出る。
　だが、元締めのヤクザに目をつけられ次第に追いつめられていく……

　この映画、低予算ながら、むしろそれを逆手に、メジャーな映画にはなかなか出来ない描写を行って、見応えのある映画に仕上げています――物語を膨らませるのではなく、敢えて閉じる事で閉塞感を演出、息が詰まるような空気に、感情が爆発する理由を与えます――そうして生まれる、剥き出しの暴力に、刺さるような苛立ち……そんな世界に生きている人々の“リアル”を感じさせる、と言う点で、これは、日本映画としてはなかなか例を見ないもの。まるで、ある種の韓国映画のような、独特の立ち位置にある、と思います。

　出演のカトウシンスケと毎熊克哉は、この映画が正に出世作となり、この後、幅広く活躍するようになるのですが、これだけの才能を見せた小路紘史監督が、その後、新作映画を送り出せていない、と言うのは、日本映画界にとって勿体ない事のように思えます。
　　

　（２０２２年　２月２６日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

小路紘史

　■出演

ケン　・・・　カトウシンスケ
　
カズ　・・・　毎熊克哉

（その他のキャスト）
　飯島珠奈　　藤原季節　　��野春樹　　江原大介　　杉山拓也

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ここから這い上がるんだよ――。

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