これは、長澤まさみ、東出昌大、小日向文世が“コンフィデンスマン”（信用詐欺師）を演じるTVドラマの劇場版第３弾。
　監督は、前２作に引き続き田中亮。脚本は、「ALWAYS　三丁目の夕日」や「探偵はＢＡＲにいる」の古沢良太。

　１００年前に登場、義賊として活動し、英雄と謳われた伝説の詐欺師「ツチノコ」……代々その名は受け継がれ、先日、その三代目が亡くなった。
　ダー子、ボクちゃん、リチャードの３人は、何れも三代目ツチノコの下で腕を磨いた過去を持っていた。四代目ツチノコ襲名を賭け、３人は真剣勝負をすることになる。
　そこで３人は、世界遺産都市・マルタで、引退したスペイン人の元マフィアが所有する幻の古代ギリシャ彫刻“踊るビーナス”を狙うが……

　このシリーズ、騙し・騙されのコン・ゲームを描くコメディですが、今回は、構成に一工夫あります……物語を登場人物ごとの視点で見せる構成なのです――そこに人物ごとの主観が入り込まず、視点を変える事で、少しずつ真相に迫って行くと言うのは、「羅生門」方式とは言えず、先日公開された「悪なき殺人」のようです。
　一方、物語としては、ベテラン詐欺師の後継者問題、と言う小さな物語でしかありません。また、前作「プリンセス編」のような感動的でもなく、大小様々なトリックと、ドンデン返しの面白さで見せる話なのですが、この工夫のせいで面白く観られました。それもまた、元々の「コフィデンスマン」のスタイルと言えばそうなのでしょう。もっとも、今回の敵役・ニセモノのツチノコの正体は、割と簡単に判ってしまうし、邦画の悪癖でもある“高笑いする悪党”と言う安っぽい演出にもうんざり……また、「バリアフリー映画」と揶揄される、台詞で説明しすぎる古沢良太脚本も鼻につくなど、欠点もまたそのままなのですが……

　長澤まさみのノリと弾けっぷりは相変わらずで、本シリーズの座長としての気合いを感じますし、最近、スキャンダルで評価の落ちている東出昌大に、これまでと変わらずどころか、“純で一途な”と言う役を与えているのも度量でしょう。　
　また、これまで登場した人物が顔を出し、逝去した三浦春馬や、竹内結子が演じていた役にも生きている存在感を示すなどの同窓会感覚も変わらず――それを、楽屋オチと嫌う人もいるでしょうが、まずは、このシリーズの集大成と言えるものになっているように思います。

　（２０２２年　１月１４日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

田中亮

　■出演

ダー子　・・・　長澤まさみ
ボクちゃん　・・・　東出昌大
リチャード 　・・・　小日向文世

マルセル真梨邑　・・・　瀬戸康史

丹波刑事　・・・　松重豊

三代目ツチノコ　・・・　角野卓造

（その他のキャスト）
　城田優　　生田絵梨花　　赤ペン瀧川　　小手伸也　　織田梨沙　　石黒賢　　生瀬勝久　　関水渚
　梶原善　　徳永えり　　高嶋政宏　　真木よう子　　広末涼子　　江口洋介

　■コピー

英雄はいつだって嘘をつく

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