「メッセンジャー」

　「私をスキーに連れてって」から始まるホイチョイ・ムービーの第４弾。
　流行りモノを敏感に取り上げ、まるで、カタログ雑誌から切り抜いて来たようなファッション性の高さと、人気俳優の取り合わせで、正に、トレンディ・ドラマ（死語？(^^;）をスクリーンでやってるようなホイチョイ・ムービーには、今までちょっと抵抗があって、観た事はなかったのですが、この作品はなかなかの評判。で、映画館に足を運んでみることに。

　さて、ホイチョイが今回取り上げたのは、自転車便（サイクル・メッセンジャー）です。

　物語は、アパレルブランド店のプレスを務める主人公の清水尚美（飯島直子）が、アパレル本社の倒産のアオリを喰って、資産一切を差し押さえられてしまう。更に、悪い事に自転車便と交通事故を起こしてしまい、その示談条件として、尚美は自転車便で働く事になる・・・と言う所から始まります。
　最近では、慢性化する交通渋滞も手伝って、都市部の小規模物流手段として存在を確固たるものにしつつある自転車便ですが、まだまだマイナーな存在である自転車便を観客に説明する為に、全く異業種の尚美の苦闘ぶりを描くと言うのは導入としては上々。
　その後も、現実でも商売上のライバルであるバイク便を敵役に、追いかけっこの対決シーンを入れてスピード感を出しつつ、サクセスストーリーに仕上げていく展開は巧みで、かつ上手いと思いました。

　主役の飯島直子は、もう最高のハマり役で、思いっきり金のかかりそうなタカビー女（これがまた似合うのだから仕方ない）と、気っ風のよさ（最後のレースで、高そうなブランド物のスカートの裾を惜しげもなく引き裂いて自転車にまたがる様は最高にキマっていました）の両面を見せてくれました。

　また、草薙剛が度々言う「オレ、何も言ってないだろう」の台詞や、ビールとシャンパンのエピソードも、繰り返し使われるネタなのだけど、小気味好かったですね。

　ただ、気になったのは、演出のチープさ。
　最初のアパレル本社倒産の知らせが届くシーンや、その後の財産差し押さえや、交通事故のシーン。
　これ、大げさにコミカルに描いているのだけど、これはマジにやらないと”怖さ”が出ないと思うのです。
　この辺、いかにも安手のＴＶドラマを見ているようで不満でした。
　その、身ぐるみ剥がれる「怖さ」に出逢っても、尚美が生活スタイルを変えようとしない事で、彼女らしさ、ってのが描けるように思うし、そんな彼女が、自転車便で走る事で変わっていったからこそ、最後の展開が活きて来ると思うのだけど。
　また、同様に最後のレースで、バイク便の敵役がエレベーター内で見せる芝居も同様に不満でした。
　（敵役は、最後まで格好よくして貰わないとね）

　また、「自転車便はバイク便より早い」と言うのが、具体的に実力で見せられず、何だか偶然の結果として早くなった、としか見せてくれないのも不満のひとつかな。
　この辺、実際に、バイクを抜くシーンがあるのだけど、こう言うシーンをレースシーンで使ってくれればよかったのにな、とも思いました。

　そんなんで、細かい部分には不満もあるけれど、娯楽作品としては水準以上でしょう。
　それでも、ＴＶドラマを大画面で見せられたような感じは、少しするのですけど・・・それはまぁ仕方ないか。(^^;

　（９月１８日　横浜・相鉄ムービルにて）

[戻る]