これは、トーキング・ヘッズのボーカルでもあったデイヴィッド・バーンによるブロードウェイ・ショーをスパイク・リー監督が映画化したもの。

　この公演の原案は、２０１８年にデイヴィッド・バーンが発表したアルバム「アメリカン・ユートピア」。ステージは、意識的に何もない空間を選び、マイクもドラムセットもなくし、配線も一切なし。デイヴィット・ハーンの他、１１人のミュージシャンやダンサーは、ワイヤレスマイクを装備、様々な楽器を手持ちし、舞台の上を縦横無尽に動き回る。
　アルバム「アメリカン・ユートピア」から５曲、トーキング・ヘッズ時代の９曲、クライマックスのブラック・ライブヴズ・マターを訴えるプロテスト・ソング、ジャネール・モネイの「Hell You Talmbout」を含む計２１曲が演奏される。

　冒頭、プラスティックの脳を持ってステージに登場したデイヴィッド・バーンが、「人間の脳は成長と共に衰えていく」と語る……その成長における脳の衰退を、発展と共に劣化する社会に重ね、現代社会の様々な問題を問い、歌とパフォーマンスによって、そこにひとつの答えを表現する……それをエンターテイメントとする事に多少のあざとさを感じはするものの、アーティストである彼らをして、こうしたメッセージを発せざるを得ない状況にある、と言う事には考えさせられます。
　まぁ、こんな感想を言うだけ野暮なような気もします――本作は、まずはそのパフォーマンスを観なければ始まりませんし、そうして得られたものこそ、このステージを通して贈られたメッセージなのだ、と思います。
　

　（２０２１年　７月２３日　Ｋｉｎｏシネマ横浜みなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督

スパイク・リー　

　■出演

デイヴィッド・バーン　　ジャクリーン・アセヴェド　　グスタヴォ・ディ・ダルヴァ　　ダニエル・フリードマン
クリス・ジャルモ　　ティム・ケイパー　　テンダイ・クンバ　　カール・マンスフィールド　　マウロ・レフォスコ
ステファン・サンフアン　　アンジー・スワン　　ボビー・ウーテン・３世
　

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