これは、劇作家・飯塚健のオリジナル戯曲を、飯塚健自ら監督を務めて映画化したもの。
　出演は「砕け散るところを見せてあげる」の中川大志、「ホテルローヤル」の岡山天音。

　終了間際の図書館に、うさぎの仮面をつけた二人組が強盗に押し入る。その目的は、“絶対に借りられない本”を見つけること。
　だが、司書らに逆襲され、取り押さえられたうさぎの二人組、自称“小説家”の剣持聡とその仲間・漆原聡の口から、事の真相が明かされて……

　この映画ですが、台詞回しとそのやり取りに特徴と面白みがあります。その辺り、なるほど舞台劇だな、と思わせます。
　映画らしい演出として、回想シーンも多用し、時間軸を前後させるなどの工夫もあるのですが、魅力的なのはやはり言葉と物語だと思います。
　もっとも、映画的な演出にをやり切れず、図書館での真相を語るシーンなどは、登場人物が距離を置いて棒立ちとなり、ひとりずつ台詞を言う、と言う“学芸会”になってしまっていたりもするのですが――実際、この図書館パートは映画の時間軸では過去の回想シーンである訳で、それならば、このパートは積極的に舞台演出にしてしまった方がよかったかもしれません。

　キャストとしては、クールな司書を演じた関めぐみがよかったです。映画主役級は久々ですが、いい女になったなぁ……
　あとは、ツッコミ担当の岡山天音がいい味を出しています。

　物語は、中盤で時間軸を現在に戻し、別のエピソードを語るのですが、そのふたつのエピソードに共通しているのは、“残された者”のドラマ、と言うこと。
　奇妙な語り口、突飛な設定に面食らうかも知れませんが、生と死で隔てられた者の、それでも生きて行こう、と言う物語はなかなか感動的。これは面白い映画でした。
　

　（２０２１年　４月３０日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督・脚本・原作・編集

飯塚健

　■出演

　剣持聡　・・・　中川大志

　漆原聡　・・・　岡山天音

　服部茜　・・・　関めぐみ

（その他のキャスト）
　森田想　　レイニ　　ゆうたろう　　田中俊介　　佐野弘樹　　山中聡　　落合モトキ　　角田晃広　　菅原大吉

　■コピー

世界なんて、想像力で変えられる。

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