サンドラの
小さな家
herself

　これは、「マンマ・ミーア！」のフィリダ・ロイド監督による人間ドラマ。
　主演・脚本は、舞台を中心に活動してきたクレア・ダンで、シングルマザーの友人の話が元になっていると言います。

　サンドラは、夫のＤＶに悩まされていた。ある日、腕を大怪我する暴行を受けたサンドラは警察の介入もあって、２人の娘と共に夫と別居する事になる。だが、サンドラに行き場はなく、公営住宅は長い順番待ちで、慈善団体が用意した仮住まいから抜け出せない。
　そんなある日、サンドラは、家を自分で建てることを思いつく。インターネットでセルフビルドの設計図を見つけたサンドラは、彼女が清掃人として働く医師・ペギーの家の裏庭を借り、建設業者のエイドらの協力を得て、家の建設に取りかかるが……

　これはタイトルから想像出来ないシビアな物語です。
　映画が描くのは、ＤＶに、シングルマザーの女性が直面する厳しい労働環境、様々な差別と偏見……それでも、お互いに助け合う、アイルランドの「メハル」の精神が彼女を救います。
　ＤＶで傷つけられ、居場所をなくしたサンドラと娘たちが、自分の居場所を作り出して行く様を、みなで作り上げる小さな家に重ねて描く、と言う映画の狙いは秀逸ではあるのですが、物語の展開、エピソードのかみ合わせが上手く行ってない、と言うか、物語が上手く転がって行かない印象を受けます。
　また、「メハル」の精神に助けられながら、夫との親権争いで追い込まれるサンドラが、周りの人にヒステリックに当たってしまうのはさすがにどうかと思うし、最後の家の完成披露パーティーは、完全に「死亡フラグ」で、その後の展開に予想がついてしまったのも残念な部分。
　ただ、そんな暴力や苦難にもめげずに頑張るサンドラと、彼女の全ての支えになっている子供たちの笑顔には心打たれます。
　それだけに、ラストシーンには、サンドラと娘たちの未来を予見させる、もう一工夫欲しかったと思いました。
　

　（２０２１年　４月１０日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

フィリダ・ロイド　

　■出演

　サンドラ　・・・　クレア・ダン

　ペギー　・・・　ハリエット・ウォルター

　エイド　・・・　コンリース・ヒル

（その他のキャスト）
　イアン・ロイド・アンダーソン　　ルビー・ローズ・オハラ　　モリー・マッキャン

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