ドリームランド
Ｄｒｅａｍｌａｎｄ

　これは、「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒」のマーゴット・ロビーが製作・主演を務めたサスペンス・ロマン。
　監督は、サンダンス映画祭で史上最年少ノミネートされた注目の若手監督、マイルズ・ジョリス＝ペイラフィット。

　１９３５年、大恐慌に加え干ばつに苦しめられるテキサス。新天地を求めて家族を捨てた父に憧れる１７歳のユージンは、使われなくなった納屋で銃傷を負った逃亡犯のアリソンを見つける。
　連続銀行強盗犯で、１万ドルの賞金首のアリソンだが、警官である継父への反発と、傷ついた美女を突き放す事を躊躇ったユージンは、彼女を匿う事にする。
　やがて、アリソンの逃亡を手助けするうち、ユージンは、ここではない何処かへの旅立ちを夢見ると共に、アリソンに惹かれていき……

　この映画、貧しい田舎で不満を抱えている少年が、魅力的な年上の女性と出会って……と言う展開は、似たようなものが数多ある、いささか陳腐なものとは言え、悪くない狙いです。
　問題なのは、そんなありきたりの物語なのに、少年のバックグラウンドを語るのにモタつく導入部に加え、語り手を少年の妹にすると言う趣向にも納得出来ずで、どうにも映画に気持ちが入りませんでした。
　更に、ユージンを演じるフィン・コールも中途半端に大人（現在２５歳）で、この物語ならもっと少年らしい俳優をキャストした方がよかったのではないでしょうか。

　ただ、そんな問題を抱えながらも、この映画、マーゴット・ロビーが出て来るとしゃんとします。
　マーゴット・ロビーは悪女と天使、両方様になる女優で、この映画でもユージンのファム・ファタールを完璧に演じています。登場した瞬間から傑出した存在感を見せつけ、逃避行中のモーテルでのユージンとの距離の詰め方（最後には“筆下ろし”まで）は、そのカット割から、ワンカットで一気に見せる展開まで、正に文句なしの見事なものでした。
　だからこそ、そんなマーゴット・ロビーを生かし切って欲しかったのですが……彼女の存在感に比肩する物語を、フィン・コール演じるユージンでは背負いきれなかった感があり、勿体ない限りです。
　

　（２０２１年　４月　９日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督

マイルズ・ジョリス＝ペイラフィット

　■出演

ユージン・エヴァンス　・・・　フィン・コール

アリソン・ウェルズ　・・・　マーゴット・ロビー

（その他のキャスト）
　トラヴィス・フィメル　　ギャレット・ヘドランド　　ケリー・コンドン　　ダービー・キャンプ

　■コピー

ここではない、どこかに“夢見る場所”があると信じたふたりの運命とは――

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