ＪＵＮＫ　ＨＥＡＤ

　これは、独学で映像制作を学んだ堀貴秀が、監督・原案・キャラクターデザイン・編集・撮影・照明・音楽を兼任し、僅かなスタッフと共に７年を費やして完成させたSFストップモーションアニメ。
　アメリカのファンタジア国際映画祭で最優秀長編アニメーション賞を受賞し、ギレルモ・デル・トロから絶賛されたと言います。

　遠い未来の地球。遺伝子操作により不老不死となった人類は、代わりに生殖能力を失っていた。そんな人類に新種のウイルスが襲いかかり、人口の３０％が失われてしまう。
　絶滅の危機に瀕した人類は、地下世界の開発の為に生み出され、今や独自に進化して地下世界を支配するようになった人工生命体・マリガンの調査を行い、失われた生殖能力を取り戻そうとする。
　そこで調査員が送り込まれるが、途中でマリガンの攻撃を受けて、地下深層に墜落してしまい……

　高性能コンピューターの普及と描画ソフトにより、アニメは個人で作る事が可能になり、新海誠監督の「ほしのこえ」や、海外でもギンツ・ジロバルディス監督の「ＡＷＡＹ」などが出て来ていますが、ミニチュアを製作しての手作業となるストップモーションアニメを、ほとんどひとりで製作し、それを劇場公開出来るレベルにまで持って行く、と言うのは尋常ではありません。
　
　映画としては、ダークな雰囲気のサイバーパンクＳＦで、地下世界で独自の生態系を構築するマリガンと言う異形のものたちが繰り広げる物語は、確かにギレルモ・デル・トロが喜びそうな内容。
　背景説明がいささか不親切な事や、地下世界と言うには明るすぎる画面――まぁ、暗闇に適合した地下住民の視界を表現していると理解しますが――が気になるし、グロテスクかつ残酷な表現があるので見る人を選ぶ部分がありますが、これは新たな才能として注目に値すると思います。
　ひとりでアニメを作っていた新海誠が、今や日本を代表するアニメ作家となっているだけに、堀貴秀監督も、何時かスタジオＬＡＩＫＡに比するストップモーションアニメ作家になって欲しいものです。

　物語はこの映画で完結しておらず、構想としては三部作になるとか……本作で注目を集めて更なる製作体制の強化を図って欲しい所ですが……ここまで７年を要しているだけに続きは何時になる事やら……　
　

　（２０２０年　３月２９日　チネチッタにて）

（作品データ）

　■監督・脚本・原案

堀貴秀

　■出演

堀貴秀　　三宅敦子　　杉山雄治

　■コピー

未来は『ガラクタ』に託された。

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