まともじゃないのは君も一緒

　これは、「愛がなんだ」の成田凌と「宇宙でいちばんあかるい屋根」の清原果耶のW主演によるちょっと変わったラブコメディ。
　監督は、「婚前特急」の前田弘二。

　恋愛経験はないが、恋愛雑学だけは豊富な女子高生・秋本香住。そんな“耳年増”な知識と、醒めた性格のせいで同級生との付き合いに馴染めず、予備校で個人授業を依頼している独身・彼女なしの講師・大野康臣との噛み合わない会話にもうんざりしていた。
　一方、大野は、ずっとひとりで好きな数学の世界で生きてきた。大野は普通に生きて、結婚もしたいと思うが、普通が何かわからない。
　大野は、そんな彼を「普通じゃない」と指摘してくれる香住に、どうしたら普通になれるのか、どうしたら結婚出来るのか、教えてほしいと頼み込むのだが……

　最近、“キラキラ映画”と言われる青春ラブコメ映画を敬遠している事もあり、本作も、女子高生が主役と言う事であまり気乗りせずに見始めたのですが――これは見事な和製スクリューボール・コメディ。
　最近の邦画は、主人公がコミュ障だったり、うじうじしてたりと会話が転がらないもどかしさを感じる事が多いのですが、本作は耳年増で口達者なヒロインと、世間知らずな理屈屋の男の、まるで噛み合わない会話が何処に転がって行くか判らない面白さがあります。
　スクリューボール・コメディの定番、途中で立場が逆転、と言う展開は抑えつつ、リードするのが女性側と言うアレンジは現代風で、男は無学なのではなく賢過ぎるのが問題、と言う一捻りした設定も巧妙です。
　演出も軽妙でテンポよく、大騒ぎはあっても品良く端正にまとめた辺りも好印象。

　ヒロインの香住は、可愛い顔してズケズケ物言う清原果耶の持ち味を活かした正にハマり役。バーで、常連のおじさんたちを相手にエナジードリンクで飲んだくれてクダを巻くシーンには笑いました。
　そして、成田凌の方も、見た目と中身がアンバランスな大野を好演。
　あと、小泉孝太郎は、香住が憧れる“カッコだけの男”の、うさん臭さが何とも似合ってる。これもハマり役でした。

　“普通”を模索する２人は、やがて、“普通”なんて人の数だけある事を思い知る――むしろ、“他人の普通は自分の異常”で、そんな様々な価値観を受入れるのが「まとも」なのだ、と言う何とも現代的、かつ普遍的な結論に辿り着くのもいい。
　これは楽しい映画でした。

　（２０２１年　３月２０日　ＴＯＨＯシネマズ川崎にて）

（作品データ）

　■監督

前田弘二

　■出演

大野康臣　・・・　成田凌

秋本香住　・・・　清原果耶

（その他のキャスト）
　山谷花純　　倉悠貴　　大谷麻衣　　泉里香　　小泉孝太郎

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普通<まとも>な恋愛って、なに？

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