ＢＡＣＵＲＡＵ
バクラウ　地図から消された村

　これは、２０１９年のカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞、ブラジル映画初のカンヌ受賞作となった異色のサスペンス。
　監督は、ブラジルの俊英クレベール・メンドンサ・フィリオと、ジュリアーノ・ドルネレスの共同。

　ブラジル奥地にある小さな集落バクラウ。長老で語り部だったカルメンリータの葬儀の為、テレサは故郷であるバクラウに帰った。
　だが、葬儀の後から、奇妙な事が起き始める。村への給水車が銃撃を受け、インターネットの地図上からバクラウが消え、携帯電話の電波は通じなくなり、更に上空に正体不明の飛行物体が出現して……

　この映画、冒頭はテンポもゆったりとしたもので、村の長老の葬儀を淡々と描く辺りは、まるでドキュメンタリー映画のようです。あたかもアート作品のようにも思わせながら、やがて、不穏が動きが見え隠れ……これはもしや「ミッドサマー」のようなホラー展開？と、訝しんだ所に登場するＵＦＯ、と、こちらの予想を少しずつズラしながら様相を変えて行きます――そして、映画は、中盤でガラリと雰囲気を変え、後半はジャンル映画的な派手な展開を見せるのです。この構成にはさすがに呆気にとられました。

　更に、そんな内容の中に忍ばせる地域格差や、政治への不信感と言う社会問題も盛り込んでと、これは意外にも巧妙な作り。
　なるほど、これは「映画秘宝」誌上で高い評価を受けた訳だ、と納得――決して“傑作”ではなく、敢えて“怪作”、若しくはカルト映画となる事を狙い、それを見事に当てている印象……かなりあざとい作りではありますが。


ＰＳ
　この類の映画となると、決まって顔を出すウド・キアー――この人の出演作品選択もブレないなぁ、と思ってしまいました……　
　

　（２０２１年　３月１０日　横浜シネマリンにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

クレベール・メンドンサ・フィリオ　　ジュリアーノ・ドルネレス

　■出演

テレサ　・・・　バルバラ・コーレン

（その他のキャスト）
　ソニア・ブラガ　　ウド・キアー　　トマス・アキーノ　　シルベロ・ペレイラ　　カリーヌ・テレス

　■コピー

見事なまでに狂ってる

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