ＤＡＵ．
　　ナターシャ

　これは、１５年の時間を費やし、１万２千平方メートルもの巨大セットに１万人のエキストラを動員。数千人のキャストは実際に職場から住居まで用意されたセットの中で実際に２年間暮らし、ソ連全体主義社会を完全再現して撮影された「ＤＡＵ．」シリーズの第一作。
　本作を含め、１０本程の映画が公開準備中とされています。

　ソ連某所にある秘密研究所。この施設では、多くの科学者たちが軍事的な研究を続けていた。
　その研究所に併設された食堂でウェイトレスとして働くナターシャは、長く勤め、研究所職員からも親しまれていた。ある日、研究所で行われたパーティーに招かれ、フランス人研究者と肉体関係を持ったナターシャは、後日、ＫＧＢに呼び出される。そして、スパイ容疑で尋問を受ける事になり……

　かつてないスケールでソ連を再現した、と言う本シリーズの第一作となる映画ですが、残念ながら本作で描かれる範囲はごく限られたもので、そんな巨大なスケールを感じる事は出来ませんでした。まぁ、これはほんの序章に過ぎない、と言う事でしょうか？
　確かに、セットの域を超え、実体として再現されたリアリティのある作風は理解出来ましたし、当時のソ連の暮らしが垣間見えるのも興味深いものがあります。
　ただ、まるで日常生活をそのまま切り取ったようなドラマのない展開、だらだらと続く長回し――実際、キャストは演じるのではなく、生活の延長を即興で見せていたと言うのですが――それは時に冗長、退屈に感じる事もしばしばで、中盤にはついうとうとしてしまいました。

　ただ、これは確かに一見の価値あり。
　プロジェクトが全貌を見せていくであろう、今後の作品にも注目です。
　

　（２０２１年　２月２７日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

イリヤ・フルジャノフスキー　　エカテリーナ・エルテリ

　■出演

ナターシャ　・・・　ナターリヤ・ベレジナヤ

（その他のキャスト）
　オリガ・シカバルニャ　　ウラジーミル・アジッポ　　リュック・ビジェ　　アレクセイ・ブリノフ

　■コピー

「ソ連全体主義」の社会を原題に蘇らせる――
前代未聞の手法で人間の本質に迫る、狂気のプロジェクト！

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