シャドー・ディール
武器ビジネスの闇

　これは、国際武器取引の実態を暴くドキュメンタリー。
　世界的に高い評価を受けているアンドルー・ファインスタインの「武器ビジネス：マネーと戦争の「最前線」」を原作に、金と権力と個人の野望が国家の安全保障や世界平和、人権や開発よりも優先される現実の闇に光を当てています。
　監督は、「ダイアル　ヒ・ス・ト・リー」のヨハン・グリモンプレ。

　これは様々な証言を通じ、武器の国際取引を取り巻く政府や軍隊、情報機関や軍事会社、武器商人や代理人の複雑な関係を浮き彫りにしていくもの。
　さらに、武器ビジネスがどのように腐敗を助長し、外交や経済政策を決定づけ、民主主義をないがしろにしていくかも明らかにする――戦争の真の代償とは何か、兵器が市民の安全を確保するのではなく、市民に向けて使われるようになるのは何故か……
　よりよい未来の構築のために、この映画は現実の闇に光を当て、戦慄の実態を赤裸々に晒していく。

　この映画だが、軍と政治家、そして軍需産業が結びつき、大国の都合が世界で絶え間ない紛争を引き起こしている……と言う内容に今さら新鮮味はなく、米国におけるネオコンの台頭と、軍民癒着により引き起こされた第二次湾岸戦争と，その後の対テロ戦争、と言う図式も、２０１８年の映画「バイス」で、こちらはエンターテイメントとして面白おかしく描かれてしまっており、どうにもピリっと来ません。
　エンドロールを観て気づいたが、これは２０１６年製作の映画で、さすがに今となっては内容に古さを感じるのは否めない所……この辺り、公開するタイミングを逃してしまったように思えます。

　それでも公開されたのは、内容にいささか古さはあるものの、情報量は多く、資料的には貴重なものを含んでいるからなのだろうとは思います。
　ただ映画としては、言語情報が多くて、充分に咀嚼し切れず（字幕観賞では尚更です）、実写素材をただつなぎ合わせただけの感が強くて劇場映画としてのビジュアルインパクトに欠け、どうにもならない現実に匙を投げたように、ポエティックとも言える哲学的な言葉で締め括るまとめにも納得は行きませんでした。　
　

　（２０２１年　２月１２日　シアター・イメージフォーラムにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

ヨハン・グリモンプレ

　■出演

アンドルー・ファインスタイン　　デイヴィッド・リー　　ヘレン・ガーリック　　リッカルド・プリヴィテラ　　ピエール・スプレー
ヴィジャイ・プラシャド　　マルタ・ベナヴィデス　　ローレンス・ウィルカーソン　　クリス・ヘッジズ　　ジェレミー・スケイヒル

ナレーション　・・・　エドゥアルド・ガレアーノ

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巨額マネーが動く、もう一つの世界

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