本気のしるし　劇場版

　これは、星里もちるの同題コミックが原作で、「淵に立つ」や「よこがお」の深田晃司監督が、自身初めてのコミック原作の映像化に挑んだもの。
　元はメーテレ系列で連続ＴＶドラマとして製作されたものを再編集して劇場版となりました。
　主演は、「レディ・プレイヤー１」に出演した事が話題になった森崎ウィン。不思議な魅力のヒロインを土村芳が演じています。

　辻一路は玩具会社の営業マン。上司や取引先の信用も厚い“デキる”男だが、その一方で、同僚の女子社員に二股かけた恋愛関係にあるなど、私生活では優柔不断なだらしなさもあった。
　ある夜、辻は、踏切で立ち往生していた若い女、葉山浮世の命を救う。それが、そこから始まる“地獄の一丁目”だった。
　殊勝な態度ではいるものの、その場限りの嘘をつき、お金や人間関係、すべてにいい加減な言動をとる浮世に振り回されながら、なぜか辻は、そんな彼女を放っておけず、浮世を追ってさらなる深みに嵌っていくのだった……

　内容はドジっ子で世間知らず、その場の感情が行動原理と言うヒロインに、何故か惹かれて振り回されるのは、外面だけはいいけど女性関係はいい加減で優柔不断と言う主人公……まるで少女マンガの登場人物のようですが、これをリアルに、尚且つ、大人がやるとこうも痛く、苛々する話になるのか――しかし、よせばいいのに泥沼に自らハマって行く主人公同様、この物語には、ヒロインの浮世同様に不思議な魅力があります。
　そんな物語は、浮世を追って自ら道を踏み外して落ちて行く男を描き、男がドン底に落ちた後、今度は、男を追う浮世の話になって行く――追えば逃げ、引けば迫るの古典的なメロドラマ展開ではあるものの、これまたここまで極端にやられると面白くなるものです。

　元となったＴＶ版は３０分枠の全１０話……ＴＶだとＣＭも入るから１話２２分くらいですから、２２３分になる劇場版は、元のＴＶドラマをそのまま一気見、と言う感じ。（実際、未公開シーンを加えたくらいで、内容はほとんどそのままのようです）
　これは実に面白いものでしたが……これが「映画」なのか、と言うとちょっと疑問も覚えます。映画にするならば、もっと刈り込んで、コンパクトに出来なかったものかなぁ……　
　

　（２０２１年　２月１２日　シアター・イメージフォーラムにて）

（作品データ）

　■監督

深田晃司

　■出演

辻一路　　 ・・・　森崎ウィン
葉山浮世　・・・　土村芳

（その他のキャスト）
　石橋けい　　福永朱梨　　宇野祥平　　北村有起哉　　忍成修吾

　■コピー

ふたりなら
墜ちても

［戻る］