分断の歴史
朝鮮半島１００年の記憶

　これは、朝鮮半島１００年の歴史を追ったドキュメンタリー。
　フランス人ドキュメンタリー映画監督、ピエール・オリヴィエ・フランソワが第三者の視点から、朝鮮半島の近代史と現在の姿を描きます。

　２０１８年６月、朝鮮戦争休戦以来、初めての米朝首脳会談が行われ、新たな平和の時代を築くことを約束した。２０１７年にはお互いに核攻撃を匂わせて威嚇するなど、世界を悩ませていた米朝になにが起きたのか。そして朝鮮は、本当に新しい未来へと歩み始めたのか……
　本作は、様々な関係者のインタビューを重ね朝鮮半島の近代１００年の歴史、そして現在の姿を描いていく。

　これは、朝鮮を含むアジアの動向と歴史に馴染が薄い欧州人向けにテレビ放送されたドキュメンタリー番組の前後篇を劇場版として一挙上映。
　日本にとっては近くて遠い国である北朝鮮の内実を含め、主に日本の統治以降の、分断された朝鮮の歴史をコンパクトにまとめていて、判り易いです。
　北朝鮮は政治的には対立する存在ではあるが、それでもかつての同胞であって理解出来ない敵ではない、と言う視点や、韓国における金一族の意外な人気、そして政治家としての高評価など、欧州の客観的な見方が新鮮に感じます。
　その一方で、帰国事業の闇や、拉致問題をスルーするなど、日本人向けには考えられない構成――製作番組が度々ＮＨＫでも放送される仏独共同テレビ局アルテのドキュメンタリーであるのにも関わらず、ＮＨＫが買い付けなかったのはその辺りが要因でしょうか？

　半島国家と言う、大陸と海洋との架け橋となる地理的環境と、大国に翻弄され、人々が行き交う中で育まれた朝鮮人の頑なな排他性とも見える、己が民族の純潔さを求める姿勢と、独自のアイデンティティ……そこに自由主義と共産主義と言うふたつの異なる政治思想が持ち込まれた故に分断に至り、他民族と関わらない民族性が、冷戦終了後も変わらぬ対立を維持させている――と言う視点もまたすぐれたもの。確かに日本に関わる内容の希薄さはあり、物足りない部分も多いのですが、隣国の状況と背景を知る術のひとつとして、これは有意義なものであったと思いました。　
　

　（２０２１年　２月１２日　シアター・イメージフォーラムにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

ピエール・オリヴィエ・フランソワ

　■出演

ナレーション　・・・　ケン・スターチェヴィック　

　■コピー

南北が分断され約７５年。韓国と北朝鮮、いま真実の想いが語られる。

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